開幕投手を務める予定だった米大リーグ・レンジャーズのダルビッシュ有投手が首の張りのため登板を回避することになった。原因は「寝違え」という。鍛え上げたスポーツ選手の「寝違え」とは珍しい。その原因と対処方法を野球選手など中心に指導されているするアスレティックトレーナーの西村典子さんに聞いた。(取材・文=フリーライター・神田憲行)
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――スポーツ選手の「寝違え」とは珍しいのでしょうか。
西村: プロレスラーのように首が太く、日常から鍛えているアスリートは起きにくいといわれていますが、まったく起きないというわけでもありません。野球選手の場合はひねり動作やとっさに動かす動作が多いため、よく見かけますよ。ダルビッシュ投手の場合は、見た目だけの判断になりますが、背が高くて首も長く、頭を支える首周辺の筋肉が張りやすいと考えられます。
――そもそも「寝違え」って、どうして起きるのでしょうか。
西村:原因はいろいろあるのですが、スポーツ選手の場合は頸部周辺(首回り)の筋肉が普段よりも硬くなっていて、突然首を横に振ったときに筋違えを起こすことで痛みを発症します。動作に対して筋肉がついていけなかったというニュアンスでしょうか。特に寝ている間は体を横にして動かない状態が続いていますので、筋肉も硬くなっていますし、とっさの動作がしにくいですよね。
もちろんスポーツ選手でなくても「寝違え」は起きます。とくにみなさんに気をつけていただきたいのは、スマホやタブレットをずっとのぞき込んでいるような姿勢です。前のめりの姿勢で常に首に緊張を強いるような状態でいると、筋肉は牽引ストレスをより多く受け、首を支えようと余計な力を使ってしまうことになります。
その結果、首周辺の筋肉は柔軟性が低下し、何気ない動作でも筋肉を痛めてしまう可能性が高くなります。昼間に長時間そういう姿勢を取っていた人は「寝違え」を起こしやすいといえるでしょう。また、強い精神的ストレスを受けたときや内臓の不調によっても首に痛みが現れることがあります。
――「寝違え」を起こしやすいタイプというものがありますか。
西村:首の骨がストレートネックといって、自然なわん曲が失われている状態の人は寝違えを起こしやすいと考えられています。これはレントゲンを撮ってみると一目瞭然です。ストレートネックの原因は姿勢にあるといわれていますが、わん曲の少ない頸椎の形状は、物理的ストレスを首周辺部に受けやすく、ジャンプして着地しただけでも首を痛めるといったことが起こりえます。
野球選手でいえばピッチャーは牽制時に首をぱっと切り返す際に、野手であればバッティングで大きくスイング動作をしたときに首が振られて筋肉を痛めやすいです。