また、ドイツ、スイス、スウェーデンといった年金が多い国の場合、高齢者は年金の半分くらいを使って外国のケア施設に行くケースも増えてきている。たとえば、タイのチェンマイには「3食添い寝付き・24時間3交代制」のフルアテンドで介護してくれる施設があるから、そういうところで余生を穏やかに過ごすのだ。要するに、欧米人は「国を変える」ことに対して抵抗がないのである。
しかし日本では、そういう海外の施設を活用しようとすると、親の介護を放棄しているかのような批判が出てくる。実際、ソニー生命保険の「親の介護と認知症に関する意識調査」(2013年10月実施)によると、親が要介護状態になった時に希望する生活場所は「住み慣れた自宅」が親は67.2%で子供は53.2%、「安心できる高齢者施設」が親は32.7%で子供は46.8%だった。
また「できれば子供に自分の介護に関わってほしい」と考えている親が76.5%、「できれば親の介護に関わりたい」と思っている子供も61.2%に達している。
だが、一家の稼ぎ手が離職したりパートタイマーになったりしたら、それまでの生活レベルは維持できない。介護だけでなく子育てもしていれば、なおさら大変だ。場合によっては、生活保護を受けなければならなくなる。少子高齢化で高齢者が高齢者を介護せざるを得ない「老老介護」の問題も深刻化し、要介護者を抱える家庭の負担はますます重くなっている。
民間の介護サービスは多種多様になってきているものの、多くの企業では過重労働で介護士が疲弊している。これから介護をどうするのか? この問題は、もはや国内だけで解決することは難しく、国の仕組みを根本的に変えなければならないと思う。
※週刊ポスト2014年4月4・11日号