今年はプロ野球が生まれて80周年の記念すべき年。それを祝うかのように、開幕カードには、巨人―阪神の「伝統の一戦」が組まれた。昨年のセ・リーグ王者・巨人の栄えある“開幕投手”を務めたのは、プロ2年目の菅野智之。誰もが注目する開幕投手の初球――菅野が投じたのは、外角へのストレートだった。
プロ野球選手にとって、“開幕”が大切な日であることはいうまでもない。特に投手にとっては、自身がシーズンで初めて投じる1球目は、何よりも大きな意味を持つ。ストレートか、変化球か……それぞれに理由がある。
●ストレート派
審判員として開幕戦を多く見届けた、元パ・リーグ審判部長の前川芳男氏はこう語る。
「投手だけでなく、打者も捕手も、我々審判員も、第1球目は何ともいえない特別な緊張に包まれます。私の経験では、大体がストライクを取りに行く、ストレートだったように記憶していますね」
「開幕の1球目は必ずストレートだった」と語るのは、ロッテのエースとして、開幕投手を13回務めた村田兆治氏である。
「13回ともストレートです。1球目でその年を占うつもりの気持ちがあったので、自分の自信のある球を全力で投げましたね」
同じ自信のある球といっても、村田氏がフォークではなくストレートを選んだのには理由があった。
「開幕投手というのは、チームに弾みをつけるため、ストライクを先行させなくてはいけない。だから自信があっても、ボールになるかもしれないフォークやスライダーではなく、ストレートなんです。開幕投手というのは、どんなベテランでもガチガチに緊張する。
正直、2番手・3番手のほうが気楽に勝てます。でも綺麗に整備された、まだ誰も上っていないマウンドに立つ名誉は格別だし、私はこの緊張感や重みが好きで、開幕戦に投げさせてくれることを意気に感じていました。不思議と開幕戦の成績は覚えていません。エネルギーを出し切るからかな」
カミソリシュートを武器に「巨人キラー」として知られ、大洋のエースとして開幕のマウンドに9回上った平松政次氏も、ストレート派だ。
「開幕戦の第1球目は、自分で一番自信のある球、ストレートを投げると決めていた。9回ともストレートです。開幕投手はエース対決だから、江夏(豊・阪神)はもちろん、堀内(恒夫・巨人)や松岡(弘・ヤクルト)も、みんなストレートを投げていたと思いますよ。開幕していきなり打たれたら大きなショックなので、丁寧にコースをついた。アウトコース低めにストレートを投げ込む。確か初球に打たれたことはなかったと思いますね」
●変化球派
反対に、最初は変化球から入るというタイプもいる。開幕投手14回の日本記録を持つ400勝投手・金田正一氏はこう語る。