この20年で大学進学時における浪人率が大幅に減少した。だが果たしてそれは「良いこと」なのだろうか。この4月に「敢えて浪人」を選んだ人にコラムニストのオバタカズユキがエールを贈る。
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春だ、新年度だ、新生活だ。この時期になると、毎年、「頑張れよ!」と言いたくなるのは、これから浪人生活を始める若者に対してである。
浪人生活を経て大学生になった若者は、2013年度の場合、7万6425人いた。なぜそういう具体的な数字を挙げられるかといえば、これは誰でも閲覧可能な文部科学省の『学校基本調査』にデータがあるからだ。
同年同調査の「高校卒業年別入学者数」をよく見ると、1浪は6万337人、2浪が9195人、3浪は2504人、4浪以上が4389人いたことが分かる。ぜんぶ足すと7万6425人になる。
この数字をみなさんはどう思うか。比較のために別の数字を挙げると、同年同調査で高校卒業後そのまま大学に進んだ現役進学者は52万2815人だ。大学学部入学者の総数は61万4183人。
計算すると入学者総数のうち現役率は約85.1%、浪人率は約12.4%である(現+浪で100%にならないのは、大学入学者の中には大検経由や外国の学校を卒業した者などもいるから)。
つまり去年の大学1年生のうち、浪人経験者は8人に1人だったのだ。これはずいぶん低い率ではないだろうか。
3人に1人ぐらいは浪人だったけどなあ、と思う人はアラフォーを中心に大勢いるはずだ。なぜなら、18歳人口がピークに達した1992年度の浪人率は約34.9%だったから。当時は3人に1人以上が浪人経験者なのであった。
そこからどんどん浪人率は下がっていった。筆者が毎年春に『大学図鑑!』というキャンパスの生声を詰め込んだ本を出すようになったのは1999年。そのときの浪人率はもう約23.9%まで落ちていたが、それでもまだ4人に1人ぐらいはいた。それが15冊目を出した去年で8人に1人へ。
大幅な改訂を施した16冊目の『大学図鑑!2015』も先日出たばかりだが、この春の大学入学生の浪人率はより下がったに違いない。「最後のゆとり世代」の高校卒業が今年で、来年の受験からは「脱ゆとり」教育を受けてきた下の学年との競争になるため、とにかく浪人というリスクを回避して現役入学を選択したケースが多かったと考えられるのだ。
という今年の特殊事情もあるのだけれど、この20年あまりの間の変化はなんなのか。なぜこれほどまでに浪人率の低下が進んだのだろう。
理由として確実にいえるのは、少子化が進んだのに大学の数や入学定員が増えていったことだ。よく指摘されている話だが、おかげで大学進学のお手軽化が進行し、高望みをしないで楽を取る、といった風潮が広がった。
長きに渡った不景気もある。家計が苦しくなる一方で、大学生活に必要な費用は増した。学費や家賃の高い東京や大阪・京都などの有名大学に行くより、地元のまあまあの国公立に行くほうが親孝行といった価値観が増大した。当然、現役入学前提で。