消費増税直前に全国で起きた「買いだめ狂騒曲」は、3月31日の深夜まで続いた。消費税8%へのカウントダウンが始まった23時45分、東京・新宿歌舞伎町にあるドン・キホーテのレジ前には長蛇の列ができていた。
繁華街とあって20代の若者たちが多いが、なかには妻に頼まれたのか、トイレットペーパーや洗剤などの日用品を買い物カゴいっぱいに詰めている40代と思しきスーツ姿の男性もいる。レジ係は手際よく会計をさばいていくが、新規の客が次々に後ろに並ぶので、列はとうとう店の奥の階段付近にまで到達。少なくとも30人以上はいるだろう。
刻々と4月1日午前0時が近づくなか、客には焦りの色が見え始めた。
「やべえ、こんなに並んでんじゃ間に合わないんじゃないの?」
「前のほうにいる人に一緒にお願いできないかな」
といった言葉が漏れる。思いあまって一般の商品を持ち込んでタバコや高額商品専用レジで会計してもらおうとしたサラリーマンは、あえなく店員に断わられていた。
この店の入り口やレジ前には「3月31日 翌朝6時まで消費税5%でのお会計となります」という赤い貼り紙があり、焦る必要はなかったのだが、それさえ目に入らないほど、客は目を血走らせていた。
都内の深夜営業スーパーでは、午前0時を過ぎても「閉店までは消費税は5%」という店が多かったが、なかには3月31日だけ臨時的に23時30分に店を閉め、値札の交換などに備える店もあった。新宿のあるコンビニでは、店員が0時前にはほとんどの商品の値札を8%表示に入れ替え、0時過ぎに訪れた客が「もう8%になっちゃったのか」と肩を落とした。
飲食店の客もいつになく“緊張”していた。サラリーマンでにぎわう東京・日本橋の焼鳥屋では、0時が近くなるにつれ、店内がざわつきはじめた。
「0時過ぎてからお勘定したら、8%になるの?」
何組もの客がそう店員に尋ねた。会計額が気になって酔うに酔えない様子だったが、「今日は閉店まで5%のままです」といわれて安心して杯を傾けていた。