「笑っていいとも」の最終回特番に出演した松本人志の発言が話題になっている。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏は「素晴らしい大人の先手必勝力」と感心する。
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3月いっぱいで32年の歴史に幕を下ろした「笑っていいとも!」。終わってからもいろんな裏話が流れてきたりするなど、日本中がまだ余韻にひたっています。そんな雰囲気に便乗しつつ、ここでは、31日夜に放送された特別番組「笑っていいとも! グランドフィナーレ 感謝の超特大号」でのダウンタウン松本人志の発言に注目してみましょう。
夜の特番でもっとも盛り上がったのが、タモリと明石家さんまとのトークに、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、とんねるず、爆笑問題、ナインティナインという大物お笑い芸人が雪崩を打って乱入した場面。あまりにも豪華すぎる顔ぶれですが、中には長いあいだ不仲説がささやかれていた組み合わせもありました。よく知られているのが、ダウンタウンの松本と、とんねるずの石橋貴明や爆笑問題の太田光は仲が悪いという説。
本人たちもそのへんは十分に意識しているようです。次々に乱入するという流れで久しぶりに同じステージに立って、松本が「ネットが荒れる~!」を連発。それに対して石橋が「ネットで見たら『キーマンは石橋』って書いてあったから」と応戦して、不仲説を意識した発言でウケを取りました。太田も「このメンバーが仲良くできるわけねえじゃねえか!」と不仲をわざわざ強調。楽しく味わい深い緊張感がステージを包みました。
あれだけ個性が強い人たち同士ですから、不仲かどうかはともかく、そりゃいろいろあるでしょう。そこはさておき、感動したのは松本の「ネットが荒れる~!」発言です。あれは、ネットでピーチクパーチク騒いでいる人たちに対する痛烈な皮肉であり、強烈なダメージを与える見事な一撃でした。
芸人さんたちを含め、テレビで活躍している人たちにとって、ネットの声が無視できないものになっているのは確か。ただ、ごくたまに「貴重な意見」があったとしても、99%は安い自己満足や妬み嫉みをベースにしたノイズに過ぎません。それでも、言われている側はけっこうなダメージを受けます。何ともうっとうしくてタチが悪い構図です。
しかし、松本がテレビの中で「ネットが荒れる~!」と宣言したことで、ある意味、力関係が逆転しました。先にそう言われて、素直にネットに勇ましいことを書いたら、まんまと松本の手のひらの上で転がされていることになって、ひじょうにマヌケです。チェックしてませんけど、まんまと転がっていた光景もたくさん見られたことでしょう。しかも、あらかじめ宣言しておけば、たとえひどいことを書かれたとしても、想定の範囲内ですからたいしてダメージを受けずに済みます。