高齢者となった団塊世代の“停滞”は、今後の日本経済に行き詰まりをもたらしかねない。処方箋はあるのか。「団塊」という言葉の生みの親であり、経済企画庁長官を務めた作家・堺屋太一氏(1935年生まれ)に話を聞いた。
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今後の日本経済の成長のカギを握っているのはやっぱり団塊の世代です。この世代に代表される日本の高齢者は、1000兆円の金融資産を持っています。これを活かさねばなりません。
そのためには、団塊世代自身の意識改革が必要です。団塊世代の大半は、衣食住ともに、職場内の関係だけで完結するコミュニティに属し、職場から与えられた仕事に励むことが幸せだと考えてきました。これを私は「職縁社会」と呼んでいます。こうした価値観は、実は官僚によって作られたものです。
戦後日本の目標は、規格大量生産を可能にする工業社会の実現でした。それは太平洋戦争の敗因が物量不足にあったという認識に起因します。そのトラウマを利用して、官僚たちは規格大量生産型の企業に人材を集中するよう誘導したんです。
かくして高度経済成長の担い手となった団塊世代ですが、会社を定年退職した途端、社会から“お役ご免”とばかりに「お荷物」扱いされてしまう。年金や医療福祉の負担が大きいことから、今や大マスコミからは、「不良債権」と揶揄される始末です。
しかし、団塊世代が、自らの価値について悲嘆する必要はありません。これまでの“幸せな人生”は官僚に作られた価値観だということを認識し、その呪縛から自らを解き放てばいいのです。
まずは、自分が本当は何をしたいのか、自分が好きなものは何かを問い直してほしい。65歳を超えてから真の“自分探し”を始めても遅くはありません。これまでの「職縁社会」から抜け出し、自分の好きなことを掘り起こせば、同好の士が集まり、グループを組むことができます。私はそれを「好縁社会」と呼んでいます。