いまだ収まらない被災地産食品への風評被害をどう考えればいいのか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が、被災地産食品の「今」をリポートする。
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東日本大震災から3年が経過した。今年も3月にはメディアは震災報道一色に塗りつぶされた。4月に入ったいま、報道は平常運転に戻ったが、この先、数十年、数百年単位でつき合わなければならない課題が、日常に存在することに変わりはない。
震災以降、現在でも福島県沖では試験操業以外の沿岸漁業や底引き網漁業は自粛が続いている。地魚がウリだった居酒屋の店主は「地魚以外を出す店になっちゃった」と言い、スーパーなどでも他県の魚がずらりと並んでいる。
一方、農産物については福島県のほか、他県への出荷も回復基調にあるという。県内最大面積のいわき市では、震災から約半年後の2011年10月から「いわき農作物見える課プロジェクト」を始動させた。キャッチコピーは「見せます!いわき いわき野菜の事実全部見せます」である。パンフレットの表紙には「毎日食べるものだから、あなたに判断してほしい」とある。
「私たちが大丈夫、安全だと思っても、そのことは口にしません。私たちがやるべきは客観的な数字やデータを発信することだと考えています」(いわき市 見せます!いわき情報局 見せる課)
安全かどうか判断するのはあくまで消費者であり、生産者とそれをバックアップする自治体としては検査体制の充実と、数値の公開に徹するというのだ。
いわき市の農作物(出荷用)の放射性物質検査結果(2011年9月20日~2014年1月31日)は以下の通り(サンプル合計数14,870)。ちなみに現在、国が定める規制値は、一般食品で100ベクレル/kgだ。
ベクレル/kg 検査数 割合
20未満 14,455 97.2%
20~50以下 311 2.1%
50~100以下 69 0.5%
100超 35 0.2%
米については、市内で生産されるすべての米の検査を行っている。まず30kgの米袋をベルトコンベアで流しながら測定する。その上で詳細検査を行う。2013年9月20日~2014年2月24日までに検査した合計55万4817サンプル中、99.96%が測定下限値未満。さらに詳細検査のうち検出されたのは1件だったという。ちなみに前年は総サンプル数52万1545件で、検出率は99.71%だった。