最近、韓国で新しい言葉が生まれた。日本製品や文化、日本人が大好きな韓国人のことを「イルポン(日本中毒)」と呼び始めたのだ。
日本のハングル読みであるイルボンと、ヒロポン(かつて存在した覚醒剤の商品名で韓国でも知られている言葉)を合わせた造語である。日本に憧れ、歴史問題などで韓国の主張より日本を信じるようなイルポン現象に火がつき始めている。
在韓ジャーナリストの藤原修平氏と、新刊『嘘つき韓国の正体』(小学館ポスト・サピオムック)を上梓したSAPIO編集部の取材班が韓国の最新事情をレポートする。
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「私は日本が大好きなんですよ。日本人と日本料理を食べるとおいしくて楽しいですし、うちの電化製品はほとんど日本製です。私は親日派ですが、そんなことを公の場で言うとクビになるので、自分のことを知日派と呼んでいます」
ソウルの青瓦台(大統領府)から歩いて約10分のところにある寿司店。「クビになる」と言いながら声を潜めることもなく、昼どきのため満員の店内で「日本が大好き」と大声で語るのは政府機関で働く50代の男性公務員だ。話を聞いているこちらが誰かに密告されやしないかと心配してしまう。
反日的な政策で大統領の支持率が上がるような現在の韓国では、「親日」と見られると「反民族的だ」と攻撃される。ところがそうした中で、「日本が好き」「韓国は間違っている」と公言する人々が若い世代を中心に目立ち始めている。
これまでも自分が親日であることをこっそり漏らす者は珍しくなかったが、周囲の非難を気にせず語り始めたのは新しい傾向だ。彼らを指して「イルポン」と呼ぶネットスラングまで生まれた。
韓国では近年、日本食がブームだ。ソウルをはじめとする大都市では日本のビールのネオン看板が目立ち、裏通りには“赤提灯”が並ぶ。どの店も深夜までほぼ満席の繁盛ぶりだ。日本式の居酒屋は20代から40代の男女を中心に大ブレイク。アサヒやサッポロなど、日本のビールが次々に彼らの胃に流し込まれていく。
イルポンの急増は数字にも表われる。日本政府観光局の統計によれば、日本を訪れる韓国人観光客は、2013年1~11月で約182万人。これは前年同期比で30%以上増加している。同時期に中国人観光客が20%減ったのとは対照的だ。