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あまちゃんで注目の三陸鉄道 全面開通まで支えた人々の思い

三陸鉄道の全線開通を地元住民は大漁旗で祝った

 昨年NHKで放映された朝ドラ『あまちゃん』の舞台となり、全国的に注目を集めてきた“復興の象徴”三陸鉄道が、4月6日に全線開通を果たした。壊滅的な被害を受けた東日本大震災から3年あまり。全長107.6kmを繋いだのは、人と人、そして鉄道会社と地域住民たちの深い絆だった。

 桜より一足早く、岩手県の三陸海岸は、三陸鉄道全面開通を喜ぶ人々の笑顔で満開になった。

「今年、三陸鉄道は開業から30周年を迎える節目の年。こういうタイミングで復旧できたことを心から喜んでいます」

 走る列車を見ながら、望月正彦社長(62)も笑顔を弾けさせた。しかし、ここまでの道のりは日頃の運行ダイヤのようにスムーズだったわけではない。震災の翌々日に沿線を確認して回った望月社長は、目の前の光景を見て、ただ立ち尽くすだけだったという。

「島越(しまのこし)地区の状態を見た時は、愕然というか唖然としました。でも三鉄は地元の足です。一緒にいた部下に『とにかく走らせよう、一刻も早く』と、その場で言ったんです」

 この思いは社員も同じだった。震災から5日後には、比較的被害の少なかった北リアス線の陸中野田~久慈間で運行を再開。全社員が休みを返上して、瓦礫の撤去作業などにあたった。

 全線107.6kmのうち、津波の被害を受けたのは317か所。線路や橋桁が流れてしまった場所も多数あった。復旧には多くの費用もかかる。しかも、三陸鉄道は20年近く赤字を続ける会社だった。

「沿線の8市町村の協力があったからこそ、県に復旧予算の交渉ができました。また、自衛隊や地域の皆さん、全国から来てくれたボランティアの方々には本当に助けられました。お陰で瓦礫撤去費用は、ほぼゼロに抑えられました」(望月社長)

 自衛隊員は「三鉄の希望作戦」と名付けられた撤去作業を進め、地域住民たちは誰に頼まれるでもなく、甦っていくホームや駅舎を掃除した。社員たちも被害の状況を知ってもらおうと「被災地ツアー」や「震災学習列車」を企画。段階的に運行距離を伸ばしながら、ついに辿り着いた4月6日だった。

「3年前の計画通りに全線復旧できたことには安堵しています。でも駅前に家が建ち、人が戻ってくるには何年もかかります。本当の復興は、まだまだこれからなんです」(望月社長)

 三陸鉄道が踏み出した新たな一歩の裏には、多くの人たちの願いと努力があったのだ。

撮影■太田真三

※週刊ポスト2014年4月25日号

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