現在は日本球界にも本塁打確認に限り、「ビデオ判定」が導入されている。それに加えてメジャーリーグ(MLB)に今季から導入された「チャレンジ制」が取り入れられるかどうかが、近ごろ話題だ。
「チャレンジ制」とは、「ストライクかボールか」を除く、ほとんどのプレーについて両軍の監督がビデオ判定を求めることができるというものだ。チャレンジ権は1試合のうち原則1回行使できる(判定が覆った場合はアピール権が消失せず、もう1度まで使用可能)。7回以降の微妙な判定に関しては、責任審判員が必要に応じて実施することとしている。
かつて「ビデオ判定」についてはMLBが導入した翌年の2009年に日本球界で試験運用が開始され、その翌年から本格的に導入が決まった。こうした制度は、大体がMLBの制度変更に追随しているケースが多い。
「チャレンジ制も、今季のMLBの状況を見たうえで将来的に追随する可能性は高い」(球界関係者)
ただ、こうした動きに反対の声は根強い。パ・リーグの元審判部長、前川芳男氏はこう話す。
「メジャーのチャレンジ制導入の背景には審判の技術の低下があり、それは日本においても同様であるのは事実です。しかしながら、監督からクレームがあって、判定がことごとく覆っていたら、審判の権威は地に墜ちてしまう。あれは明らかなミスだと球場のファンが思うのと、機械による判定で実際に白日の下に晒されるのでは、影響力も違う」
運用面でも課題は残る。
「試合には“流れ”というものがある。考えようによっては、対戦相手が波に乗っている攻撃中、少しでも微妙に見える判定があれば、その流れを止めるために行使することもできる。ルールブックごと変える必要が出てくるでしょう」(同前)
さらに、球場ごとに設備上の差異も出てきてしまう。現状でも、本塁打のビデオ判定は、設備の整わない地方球場では実施されていない。
「MLBではチャレンジの映像を確認するセンターを、10億円以上かけて作りました。設備投資もバカになりません」(在米のジャーナリスト)