自衛隊広報誌と聞いて思うのは、お国を守るお堅い雑誌。さも鍛え上げられた武骨な隊員たちや兵器が載っているのだろうと思いきや、さにあらず。表紙を飾るのはグラビアアイドル、ページをめくれば有名タレントが登場し、人気の婚活コーナーなんてのもある。しかもこの雑誌、部数はうなぎ登りというから驚く。異色の広報誌『MAMOR』(マモル)のおもしろワールドを覗いてみた。
「いいよー、カワイイよー。体を傾けてみようかー、そうそう」──周囲にバシャバシャとシャッター音が鳴り響く。ありふれたグラビア撮影の光景のようだが、何かが違う。撮影場所は護衛艦の艦上、モデルの亜里沙さんが着ているのは自衛隊の制服だ。
実はこれ、『MAMOR』の撮影風景である。「自衛隊広報誌にグラビアアイドル!?」と驚くのはまだ早い。ページをめくれば、マツコ・デラックスが隊員と対談していたり、さかなクン、いっこく堂などの有名人が号ごとに登場する連載があったりと、まるで若者向け雑誌の趣きだ。
有名人だけではない。女性自衛隊員にスポットを当てた特集をしたかと思えば、テレビ番組と連動した「自衛隊員が真剣お見合いに挑戦しました」という記事やミリタリーキャラ別占いと、とにかく自衛隊のお堅いイメージとはほど遠い。しかも、広報誌ながら、書店で販売もされているのだ。
このぶっ飛んだ広報誌の企画を防衛省に持ち込んだのは、編集長を務める扶桑社の高久裕氏だ。
「小泉政権下で民活導入が叫ばれていた頃で、その後、競争入札で企画が採用されました」
2007年の創刊当初の表紙には、戦車や戦闘機などの写真が使われ、軍事雑誌のようだった。ところが、2年目の表紙で突然、制服姿のほしのあきが敬礼ポーズで登場。以降、AKB48の前田敦子(当時)や里田まいなど、多くのアイドルが表紙を飾るようになった。
「本当は創刊からやりたかったのですが、最初は恐る恐る、手探りだったので(笑い)。タレントを起用すると、本人がブログなどに書いてくれるので、自衛隊に興味のない人にも自衛隊や雑誌をアピールできるんです」(高久編集長)
読者ターゲットは軍事マニアではなく一般の人々だという。だから、専門用語を極力減らし、自衛隊について一般の人が知りたいと思うことを中心に記事を構成する。