テレビ各局では4月期の新ドラマがスタートし、それに伴い、各ドラマのキャストが番組宣伝を兼ねてバラエティ番組に多く出演した。普段、ドラマや映画にしか出演しない俳優や女優をバラエティ番組で見ることができる貴重な機会だが、テレビ局関係者はどう捉えているのだろうか。
「基本、嬉しいことだと思います。視聴者も俳優さんや女優さんの素顔を見たいと思うでしょうからね。ただ、『この質問はNG』とか『この話題はNG』という要求があまりに多いとうんざりします。なかには、“出てやっている”感の漂う事務所があるのも事実です」(テレビ局関係者)
テレビの歴史を振り返れば、たしかに俳優や女優陣をバラエティ番組に呼ぶことで、視聴率が上がっていった。伝説の番組『8時だョ!全員集合』(TBS系)は1969年10月の放送開始当初、視聴率15%前後だった。現代では15%も取れば、万々歳の数字だが、当時は裏番組『コント55号の世界は笑う』(フジテレビ系)が30%を越える数字を叩き出していた時代だ。
このお化け番組に対抗すべく、『全員集合』のプロデューサー・居作昌果氏は、ドラマの出演者をゲストに呼ぶことを考えつく。1970年1月24日の回では、人気ドラマ『サインはV』の岡田可愛、中山麻理らがバレーボールのユニフォーム姿で、ドリフとバレーボールコントに興じた。すると、視聴率は一気に27%を記録。
翌週から立て続けに、『柔道一直線』の桜木健一、『キイハンター』の丹波哲郎、野際陽子らが出演し、『全員集合』は世間に認知された。以降、人気ドラマからのゲストがいなくても、高視聴率を維持するようになる。俳優・女優の力を借りて、『全員集合』は日本を代表するバラエティ番組へと成長していったのだった。
居作昌果氏の著書『8時だョ!全員集合伝説』(双葉文庫)では、こんなエピソードも紹介されている。
ある回で、大スター・加山雄三が出演したとき、東宝テレビ部は、スターのイメージを傷つけるようなバカなことをやらせないことを条件に、ゲストオファーを呑んだ。ところが、本番当日のリハーサルで、加藤茶のギャグである「ウンコチンチン」を、加山本人がやると言い出した。プロデューサーが東宝とのやり取りを伝えると、加山はこう言ったという。