そうすると相手は一方的に命令されたとは感じないから、異論を差し挟む余地が生まれる。「この人は水曜日までに見たいと言っているが、見せるかどうかは自分で判断できるな」と思うわけだ。そして「目いっぱい急いでも金曜日までかかります。金曜日ではダメですか?」などと相手は自分の都合を説明できるので、会話がつながっていく。
ただし、相手の言うままに決めさせてはいけないケースも多いから、次に「では、最終的なものは金曜日でいいけれど、この数字だけはどうしても水曜日までに必要なんです」と言えば、相手はそれに応じると思う。
つまり自分が一方的に命令するのではなく、決めるプロセスに相手を参加させること、すなわちパートナーとして「相談」することが英語表現のポイントなのである。
しかし、和文英訳の英語ではそういう表現は出てこない。たいがい主語を「I」ではなく「You」にした直截的な言い方になる。だから、日本人は英語での交渉や商談で相手を怒らせたり気分を害したりして失敗するケースが多いのだ。
※『大前研一の今日から使える英語』(小学館)より