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しりあがり寿氏 敷居低く「何でも受ける」仕事術で紫綬褒章

 漫画家のしりあがり寿氏が紫綬褒章を受章した。面識もあるコラムニスト・オバタカズユキ氏が同氏の人間的魅力を紹介する。

 * * *
 思いつきレベルのアイデアをこの場で明かすのもナンなのだが、『カッコいい50代入門』のような本が書けたらいいな、と考えていた。ジャンルを問わず、「あの人っていい感じだよね」という50代の人々のインタビュー集をつくるのだ。

 なぜ50代なのかにすごく深い意味はないのだけれども、「現代日本において人間の本領が発揮されるのはその年代ではないか」という仮説がひとつ。そしてもうひとつ、私が今年で50歳になるので、「その心構えを先輩諸氏から教わりたい」という気持ちが企画意図にある。

 このアイデアが出てきたときに、インタビュー対象者としてまっさきに浮かんだのはマンガ家のしりあがり寿氏(56)だ。うんうん、絶妙な人選だぞ、他には誰が挙げられるかな。そう勝手に企んでいたのだが、先日、そのしりあがり氏に紫綬褒章が贈られるというニュースが流れた。

 紫綬褒章とは何か。内閣府のサイトには、授与対象は「学術、芸術上の発明、改良、創作に関して事績の著しい者」とある。紫色の褒章が天皇の名で授与されるそうだ。賞金が出たり、特権が伴ったりするわけではないが、かなりの名誉らしい。今回は、フィギュアスケートの羽生結弦氏(19)や俳優の宮本信子氏(69)など、計23人の同章授与が決まっている。

 国家に先を越されちまった! というのは冗談だとしても、ちょっと驚いた。受章の発表を受け、しりあがり氏自身も、ブログにこんな文章を載せていた。

「ビックリしました!!!
皆さんもなぜ?とお思いになるでしょうが、自分もビックリです。
恐縮というか畏れ多いというかもったいないというか。」

 読みながら、「恐縮というか畏れ多くなったのはこちらこそです」という気持ちになった。上記のようなアイデアを考えていただけでなく、しりあがり氏には、『大学図鑑!』という年刊本の表紙イラストを1999年からずっと担当してもらってきたからである。毎年春が来る前に、編集者や監修者の私の意向に沿った仕事を、たぶん厚遇とはいえない条件でお願いしてきた。国家も認める創作家に対し、もったいないというか……。

 しかし、しりあがり氏は、紫綬褒章の受章者になったから、これからは畏れ多くて仕事を頼めない、といったマンガ家ではない。そう願いたいというか、しりあがり氏はとっくの昔から偉いマンガ家だが、偉ぶるところがまるでない自然体の人なのだ。ブログの続きの文もこうなっている。

「でも、ウレシイです!!!
来年で最初の単行本を出してから30年になりますが、
もうずーっとマンガやその周りをウロウロしてて、
例えば道をはずれて藪の中を彷徨ってたような。
見つけたと思った道がいきどまりだったり、
拓いたと思った道を振り向けばだれもいなかったり、
探しているものさえ忘れてしまったり、
そんな自分の迷走をどこかから見ていてくれた人がいた、
ということがとてもウレシイです!」

 56歳にして、この率直さと軽やかさ。カッコいいでしょ!

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