横浜DeNAベイスターズの中村紀洋選手の2軍降格処分が波紋を呼んでいる。ベテランとはどうあるべきか、フリーライターの神田憲行氏が考察した。
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コトの起こりは6日の巨人戦のあと、横浜ベイスターズの中畑清監督が中村紀洋選手の2軍降格に際して、報道陣に
「チーム方針に従わない言動があった。今回は懲罰的なところがある」
と発言したことから始まる。これに中村選手がフェイスブック上で愚痴とも反論ともいえない書き込みを行った。それによると中村選手はコーチに
《(自分が)打席に入っているとき 走者を場面によっては動かさず、打撃に集中させてほしいとコーチに相談させてもらいました》
《コーチに相談することが監督批判になってしまった形です》
そして
《今回の相談するという行為が『批判』と映ったならば寂しいこと》
と述べている。
本当に「相談」が「監督批判」と判断されたのか、中畑サイドから情報が出てこないので真偽はわからない。ただ中村選手の自己評価と中畑監督の中村選手への評価に開きはありそうだ。
書き込みはファンから「ワガママではないか」など非難が殺到し、翌日、中村選手は
《この度は、私のフェイスブック上でのコメントにより、お騒がせいたしまして、大変申し訳ございませんでした》
と、謝罪文をアップする羽目になった。
私が中村選手の書き込みで注目したのはここだ。
《自分としてはどうモチベーションを保つべきか苦悩しています。勝つために1軍のフィールドに僕は必要ないのだろうか……》
勝つために選手のモチベーションを引き上げるのも指揮官の任務の一つとはいえ、プロ野球生活22年目の41歳、年俸5000万円のベテランのそれまで気にせねばならぬとしたら、私は監督にご同情申し上げる。
ベテラン選手のモチベーションの在り方を私に教えてくれたのは、05年、楽天イーグルス1年目に在籍していた金田政彦投手である。その時点で36歳、プロ野球選手13年目、最優秀防御率のタイトルも獲得している実績のある投手だ。オリックスとの分配トレードで楽天に移籍してきた彼は調子も良かったが、若手優先のチーム方針で開幕2軍スタートだった。しかし私の取材にこう答えた。
「悔しかったですよ(中略)だけど2軍でしっかり投げていれば他の球団が見てくれて、また移ることもできるだろうから絶対に腐らずに投げてやろうと考え直しました」
また別の機会の取材ではこうも言った。
「勝ち負けで良い監督悪い監督という評価をファンはしますが、プロ野球選手からすれば自分を使う監督が良い監督、使わない監督が悪い監督です」
これが腕1本でプロ野球界を渡ってきた男の矜持である。