昨今、大手食品メーカーなどの商品ページで「新商品」だけでなく、「リニューアル商品」も合わせて紹介しているのを多く見かける。定番商品はもとより、人気となった商品が定番化するプロセスでも、リニューアルや新フレーバー展開を行なう――といったケースが増えているようだ。そしてリニューアルの成功により、大幅に売上げを伸ばしているロングセラーブランドも存在する。こうしたリニューアルの増加には、どういった背景があるのだろうか?
「リニューアルと一口に言っても、そのパターンや振り幅は多様です。例えば、かつての車や昨今のPCなど、毎年あるいはシーズンごとに細かなモデルチェンジを行なう製品もありますし、既存の形を捨てて完全に新たな製品に変化させるケースも。80年代はこうした活動が多いことを欧米からは“ムダ”と評された時期もありました。しかし、スピーディにものを進化させていく手法は日本の“お家芸”とも言えるやり方です」と語るのは、慶応義塾大学名誉教授で日本マーケティング協会理事長の嶋口充輝氏。
こうした流れは、最近の市場ニーズと企業活動の双方にメリットがあるという。
「今は商品のコモディティ化で差別優位が築きにくく、同時に市場規模を確立している商品でも、ブランド力を維持しながら、変化の激しい消費者の細かなニーズに対応していかなければなりません。またそうしたニーズに応える上で、事前のマーケティングを綿密に行なっても、実際に売れるかどうかを測ることは難しい。しかし既存顧客をきちんと掴んでいる商品であれば、ニーズを取り込んだ商品をリニューアルやバリエーションのひとつとして売り出し、消費者の反響を更なるマーケティングに活かすこともできますし、コモディティ化した市場に活動のリズムやサイクルを生むことも可能です」(嶋口氏)
企業のPDCAサイクルから出た商品が、市場に積極的にアウトプットされることで、消費を活性化する――といった効果もあるようだ。そして最近、リニューアルで成功した例のひとつとして挙げられるのは、3月4日にリニューアル発売した『ペプシネックス ゼロ』。発売約1ヶ月半で販売数量が300万ケースを突破。これは同ブランドの販売を手掛けるサントリーが1998年に発売開始して以来、過去最速のペースだという。この好調ぶりは、何が起因しているのだろうか?
小栗旬がメインキャラクターの「桃太郎」CMは、CMの月間好感度調査で1位を獲得。話題となった独特な世界観を展開するこの「桃太郎」CMでブランドイメージを高めたが、販売拡大の要因はそれだけではないという。今回のリニューアルにあたっては、ペプシコ社の知見を活かし、植物由来の甘味料「ステビア」を新たに使用することで、コーラ飲料ならではの厚みのある味わいと後味の自然なキレを実現し、これまでのファン層からも「美味しくなった」という声を多く獲得したのだ。
また「美味しくなった」ことを背景に、大胆な比較広告CMで「味」そのものへの興味を喚起し、消費者の購入モチベーションを向上。このように“コミュニケーション”だけでなく“味”の進化といった、両面の挑戦的なリニューアルで相乗効果を生んだことが、今回の販売ペースの記録更新という大きな成功へ繋がった要因といえそうだ。