ドライバーの運転を自動でアシストし、衝突事故を回避したり軽減したりしてくれる“ぶつからないクルマ”の普及が目覚ましい。
特に、カメラやレーダーで周囲の障害物を捉え、危険を察知すると警告音とともに「自動緊急ブレーキ(AEB)」が作動する機能のついた車種が一気に増えた。昨年、日本自動車研究所が公表した調査でも、2016年度のAEBの国内普及率は50%の230万台になると予測されている。
国内の主要自動車メーカーは押し並べて自動ブレーキを搭載したモデルを発売しているが、もっとも評価が高いのは富士重工業(スバル)の先進安全システム「アイサイト」だ。自動車専門誌『日経オートモーティブテクノロジー』の最新号(5月21日発売)でも、自動ブレーキ性能評価の比較試験で堂々のトップに輝いている。
アイサイトは車両に搭載した2台の3Dカメラで前方の対象物を捉え、クルマとの時間を計算して段階的にブレーキ制御してくれる。クルマと対象物との時間差が時速50kmでも安全に止まることができる。
だが、そんな高性能もさることながら、違った視点で評価するのは自動車ジャーナリストの井元康一郎氏だ。
「いくらハイテク化が進んでも、自動的なシステムに人間が身を預けると不安がつきまとうものです。でも、アイサイトは前にクルマがいることを知らせる信号やインフォメーションの伝え方が非常に的確で分かりやすく、それでいてドライバーの邪魔にならない。思わず『教えてくれてありがとう』という気持ちにさせてくれるのです」
運転者の戸惑いや不快感を抑えたうえで自動ブレーキを利かせる――。アイサイトは、スバル車の開発陣がドライバー本位のシステムづくりに努力や試行錯誤を積み重ねた賜物といえる。
自動ブレーキはアイサイトの「カメラ方式」のほか、トヨタやホンダ、フォルクスワーゲンなどがこぞって採用している「ミリ波レーダー方式」も高性能として知られている。
「ミリ波レーダーは金属反応で遠くのクルマや障害物を察知する能力が高く、カメラや赤外線レーザーより優れています。ただ、人を見分けることができなかったり、システム自体が高価だったりすることが難点。もう少し形状認識の技術が進み、コストダウンが図れれば次世代自動ブレーキの主役になるでしょう」(前出・井元氏)
では、これからクルマの購入や乗り換えを考えている人は、どんなポイントで自動ブレーキ車を選べばいいのか。
「自動ブレーキが作動する速度は、どのメーカーも時速50km、60kmぐらいから段階的に落としていく技術は持っているのであまり大差はないでしょう。ただ、徐々に減速して最後まできちんと止まる車種を選んだほうがよいでしょう。
より高度な自動ブレーキが欲しければ、例えばカーナビと連動して急カーブでオーバースピードになったときに自動的にブレーキをかけてくれる車種もあります。かたや、予算も少なく、渋滞時の追突事故さえ防げればいいという人は、低価格で標準装備されているような自動ブレーキで十分です」(井元氏)