アベノミクスが日本国債の「安全神話」を揺さぶろうとしている。国債といえば、国が元本保証する事実上のノーリスク資産だ。2002年のペイオフ解禁以降、1人1000万円までしか保証されなくなった銀行預金よりも安全とされ、特に高齢者の投資先としてもてはやされてきた。
ところが、国債への信用がこの夏、一気に瓦解する可能性が出てきた。神話崩壊の大きな契機となる発言が4月16日、麻生太郎財務相からもたらされた。
「GPIFの動きが6月以降出てくる」
国会での麻生発言を受けて、海外投資家たちはにわかに色めき立ち、日本株買いに走った。日経平均株価はこの日、前日の1万4000円割れから400円超の急上昇を見せた。どういうことか。
公的年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」は、これまで国債など国内債券を中心に運用してきた。その割合は昨年末時点で国内債券55%、国内株式17%、外国株式15%などとなっている。しかし、高齢化が進み、今後ますます年金給付が増えると、積立金は目減りするばかり。年金財政を改善させるべく、ポートフォリオを見直し、株式投資を拡大してより高いリターンを求める運用方針の変更を安倍政権は求めていた。
昨年11月には内閣官房に置かれた有識者会議で株式の比率を高める提言がまとめられ、今年4月22日にはGPIFの運用委員会のトップに有識者会議のメンバーが選任されるなど、官邸主導の地固めは着々と進められてきた。麻生発言は、その動きが6月頃から活発化すると示唆したのだ。
では、なぜ国債暴落のリスクを冒してまで、政府はGPIFの運用方針転換に踏み切るのか。そこには「年金資金の運用益アップ」とは別の理由もある。