集団的自衛権行使の解釈改憲で強気一辺倒に見える安倍晋三首相だが、その足元の自民党内からは「反安倍」の火の手が上がり始めた。
「言語道断だ。この方法で突破口ができれば、憲法9条だけでなく、基本的人権の尊重までもが崩される」
首相が集団的自衛権行使容認をぶち上げた日、村上誠一郎・元行革相は集まった記者団に、まるで野党のような言い方をしてみせた。
村上氏は「政府が関連法案を出すなら反対する」と公言する自民党きっての解釈改憲反対派の急先鋒で、3月末には集団的自衛権行使に慎重な公明党の山口那津男・代表、民主党の岡田克也・前副総理、結いの党の小野次郎・幹事長ら東大同期との会談で、「山口さんは頑張っている。野党はもっと声をあげたらどうなのか」と焚きつけて“安倍包囲網”を仕掛けている。
それに呼応するように大物が声をあげた。野田聖子・総務会長だ。月刊誌『世界』のインタビューで、〈重要なことを憲法の解釈変更だけで行うことで政策の安定性がなくなるのではないかと心配しています。(中略)慎重な意見はかき消されがちですが、それでも、これでいいのかという疑問や異論は、投げかけていく必要があると思います〉と、首相に注文をつけ、自民党3役としては異例の“党内野党宣言”をしたからだ。
安倍首相にとって総務会は鬼門。前回の総務懇談会では、それまで息を潜めていた党内の慎重派議員30人近くが突然、批判の声を上げた。首相は「なんであんな会を開いたんだ」と怒ったが、集団的自衛権行使容認を閣議決定するためには、事前に総務会で満場一致の了解を取り付けなければならないルールがある。
解釈改憲に慎重な岸田派議員がいう。
「総理の思い通りに閣議決定できるか、われわれ慎重派の意見を反映させるかの決戦は総務会になる。その総務会を仕切る野田さんが反旗を翻したのは大きい。大荒れになって執行部が途中で反対の議論を打ち切ろうとしても、総務会長がダメだといえば強行突破はできなくなる」
慎重派の背後にいるのは自民党リベラル派の大御所たちだ。