文化や習慣の違いを軽く見てはいけないのは、それが日本人による移民差別につながりかねないからだ。
日本人は電車のホームやバス停できちんと並んで乗車する。しかし中国人は割り込みが当たり前。そうした日常的な感覚の違いについて「嫌だな」と感じることが差別の萌芽となり得る。諸外国の例を見ても移民を大量に受け入れれば、集団で住む地域が生まれがちで、そうなると文化の壁はなかなか取り払われない。
在日コリアンの歴史から私たちは学ぶべきだ。固まって暮らす習慣や言葉の違うグループに対して差別感情が生まれ、派生する様々な問題が起きた。これは日本人にも在日コリアンにも不幸なことだった。
数十年が経って在日コリアンも3世、4世の世代になり、普通に日本文化に同化してきた。むしろ彼らが韓国に住もうとしたら、習慣の壁に突き当たることになるだろう。私も韓国の親戚や友人のために骨を折っても、「ありがとう」と言われないことに寂しい思いを感じるようになった。
人口減少にどう対応するかは議論すべきだろう。しかし、単純に移民の「数」で問題を解決しようとすると、大切なものがこぼれ落ちかねない。
※SAPIO2014年6月号