ライフ

1日に殺処分される犬104頭 「殺処分ゼロ」実現に必要なのは

 環境省が、年間約16万頭が処分されている犬猫の「殺処分ゼロ」を目指す取り組みを始めた。その具体的な取り組みとは何か。コラムニストのオバタカズユキ氏が解説する。

 * * *
 浅田美代子や杉本彩ら著名人を「応援団」として、去年の11月から環境省が推し進めている「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」(公式HP あり)をご存知だろうか。

 そのプロジェクトの中身である「アクションプラン」が先日発表された。時事通信は、「犬猫殺処分ゼロへ計画=モデル地区を選定―環境省」と題し、以下のようなニュースをネットに流した。

<環境省は3日、引き取り手がなく、年間約16万頭が殺処分されている犬や猫について、将来的にゼロにするための行動計画を発表した。遺棄防止や譲渡活動など先進的な対策を実施している自治体を今年度中にモデル地区に選定し、取り組みを全国に広げる。飼い主情報を登録したマイクロチップの装着義務化などについても検討する>

 昔、殺処分場を取材して以来、この問題がいつも頭のどこかに貼りついている私としては、ようやく国も動き始めたのか……という気持ちになった。すでに各地方自治体や関連NPOなどはさまざまな活動を展開しており、昨年度は神奈川県動物保護センターと川崎市内の動物愛度センターが、初の犬の殺処分数ゼロを記録している。

 国が援護射撃をすることで、それらの地方自治体は「モデル地区」として、より注目を浴びるだろう。動物愛護に関心を持つ人には、感情的になりすぎる場合も少なくないけれど、コツコツと状況改善に取り組んできた人や組織がたくさん存在し、その成果が国の重い腰を動かしたともいえるのだろう。

 そういう意味で、とりあえずグッドニュースだ。が、「アクションプラン」は他に何を計画しているのか? 報道されていたのは、モデル地区の選定とマイクロチップ問題の検討ぐらいである。公式HPを開いても、その内容がまだ掲載されていない。

 じれったいので、ニュースが報じられた当日、環境省に電話をかけてみた。すると突然の問い合わせにも関わらず、担当課の職員がていねいに対応してくれた。発表で記者に配布したというA4の「アクションプラン」概要を15枚も、FAXで送ってもらえた。

 その配布書には、犬猫の「飼い主、事業者、ボランティア、NPO、行政等が一体となって取り組みを展開推進」すべき、ありとあらゆる事項が並んでいた。ペットショップでの生体販売の原則禁止、と読めるものまで挙げられており、この問題に関心を持つ人が思いつくアイデアラッシュみたいなことになっていた。

 が、それらの多くは、あくまで「検討すべき事項」とされている。その断り書き付きでアイデアを挙げるだけなら、誰だっていくらでもできる。このプロジェクトが実際に着手しようとしているのは、おそらく次の4つの「モデル事業例」だ。名称と解説を、配布書から抜粋しよう。

【所有者不明の猫対策】
 所有者不明の猫の引き取り数を減らすことを目標に、関係者が連携するための協議会を立ち上げる等して、飼い猫の室内飼いの徹底の推進、不妊去勢措置の徹底、地域猫対策の推進等を総合的に行うモデル事業

【マイクロチップ等による所有明示推進】
 迷子の犬猫の所有者への返還を大幅に推進させること等を目標に、関係者が連携するための協議会を立ち上げる等して、マイクロチップ等による所有明示の徹底や返還のための効果的な周知・情報発信を行うモデル事業

【広域的な譲渡の推進】
 自治体の管轄区域を超えて広域的な譲渡の推進を図ることを目標に、関係者が連携するための協議会を立ち上げる等して、広域的な譲渡の試行や普及啓発等を行うモデル事業

【教育活動の推進】
 国民の動物適正管理の考えをより醸成するため、関係者が連携するための協議会を立ち上げる等して、教育活動を推進し、適正飼養の徹底等、将来的な引取りの削減を図るモデル事業

 より平たく言えば、つまりこういうことだ。不妊去勢などでの野良猫減らし、なかなか普及しないマイクロチップ施術のテコ入れ、自治体が引取った犬猫を新しい飼い主に渡す「譲渡」のさらなる拡大、安易にペットを飼わないことの啓蒙、を国が勧めようというわけである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン