今回本誌は、将来を心配する還暦間近の著名人3人に、実際にこのテストを受けてもらった。まずは経済評論家の森永卓郎氏(56)。意外にも、危機感が強かった。
「最近、とくに人の名前を思い出せない。しょっちゅう会っている人でも、会って名前が出てこない。テレビやラジオに出ても、『あの……あれ……なんだっけ』という感じで言葉に詰まって、ボケてきたのかなと漠然と思っていました。この前は鳩山(由紀夫)首相と野田(佳彦)首相の間の首相の名前(菅直人氏のこと)が出てこなかった」
結果は、認知機能指数78.54。50未満が「MCIの疑いあり」と判定されるため、「問題は見つかりません」という結果だった。
「全部覚えられなくて、『大丈夫なのか』とちょっと心配していました。普通なら3回聞けば覚えられるじゃないですか。いまでもどうしても一つ思い出せない。問題ないと聞いて、正直どうなのかと思っています」
実はこのように、思い出せないと悔しがるうちは問題ない場合が多い。認知症は、「忘れたことを忘れてしまう」ものだからだ。
次にロサンゼルス五輪金メダリストの森末慎二氏(58)。
「僕はモノを覚えるのが元々苦手で、電話番号などもメモしないとだめなほう。テストは緊張しました。10単語のうち、半分くらいしか覚えられなかったと思います」
結果は、66.19。これも問題ない数値だった。
「認知症は自分が気づかないうちに進行するものだから、正直怖い。脳ドックも受けていて、脳の収縮もないと言われていましたが、やはり安心しました」
最後に、コラムニストの小田嶋隆氏(57)。
「1+1を繰り返すようなものかと思ったら、予想よりも難しかった。2回目、3回目は全部覚えられましたが、最後もう一度やったときは一つ出てこなかった」
そう言いながら、結果は78.56というハイスコア。しかし、本人の関心は別のところにあった。
「問題は『疑いあり』の場合、どうすればいいのかということです。早期発見したところで、個々人の意識に関わることだから、自覚的な予防が難しい。尊厳を傷つけるなど、むしろ悪影響が出ることも考えられる。それを知ることが、果たしていいことなのか悪いことなのか、疑問です」
小田嶋氏の指摘には一理ある。認知症は他の病気と違い、依然としてメカニズムがはっきりしておらず、発症した場合の効果的な治療法もない。だから、これまでも将来認知症になるリスクに関しては、どれだけ知る必要があるのかについて議論が繰り返されてきた。
※週刊ポスト2014年6月20日号