寿命100歳時代を迎え、「ボケない」ことが最重要テーマとなる中、本誌前号で取り上げた「10分間で認知症予備軍かどうかがわかる判別テスト」は、大反響を呼んだ。
このテストでは、電話口でオペレーターの質問に約10分間応答するだけで、軽度認知障害(MCI)であるかどうかを97%の精度で判断できる。もとは米国メディカルケアコーポレーション社が開発し、現在、米国では主要民間保険会社52社のうち51社でこのテストが採用されている。この日本語版は、福岡大学の山田達夫教授らの検証によって原版と同様の精度が確認されている。
やり方は簡単だ。ネット上でカードを購入し(1回3500円・税別)、電話でそのカード番号や名前、年齢などを伝えると、テストがスタート。まず電話口のオペレーターが関連性のない10個の単語を読み上げ、それを復唱して暗記する。たとえば、寝室、産毛、メッセージという具合だ。復唱が終わると、それを思い出してオペレーターに伝える作業を、3回繰り返す。
次に、オペレーターが動物の名前を3つ読み上げ、最も異なる(タイプが違う)と思われる動物を一つ選ぶよう指示される。何が正解というものではない。
たとえば、猫、犬、牛から何となく猫を選ぶ、というようなものだ。この選択を2~3分繰り返す。
最後に、もう一度最初の10の単語リストを思い出す。これで、テスト終了である。この間、わずか10分。結果は、その後郵送で送られる。なぜこんな簡単なテストで、MCIかどうかが判別できるのだろうか。
テストでは10の単語が提示され、その並び順によって、どれほど記憶力に差が出るかが判別される。短い時間(数秒)内に物事を記憶し認知処理する能力を「作業記憶」、受け取った情報の記憶が短期間、保持される能力を「短期記憶」という。
このテストでは、まず復唱して単語を記憶することで、作業記憶が問われる。その後、別の作業が挟まった後に、もう一度単語リストを思い出すことで、短期記憶が問われることになる。短期記憶は、時間の経過や新たな情報のインプットとともに失われる。
認知症の初期症状では、作業記憶や短期記憶に衰えが見られる。このテストは、そうした能力を総合的に評価するために構成されたものなのだ。