日本が経済成長するためには、日本経済の6割を占める個人消費を拡大しなければならないと大前研一氏は考えている。そのためには、消費全体の46%を占める60歳以上の高齢者を刺激して消費を拡大するのが最大のポイントで、そのために有効な手段としてインフラ投資が終わっている漁港を活用したマリンレジャーを推進することを大前氏は提案している。
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中高年者の消費を拡大する有効な手段として私が提案したいのは、すでにインフラ投資が終わっている漁港を活用し、船遊びや釣りなどのマリンレジャーに連れ出すことだ。
いま日本の中高年者には登山が人気で、全国各地の山が大混雑している。(遭難事故も増えているが)誰でもいつでも気軽に行って自然を楽しめるからだろう。
一方、海のほうは極めて閉鎖的だ。島国・日本の海岸線は約3万5000キロに達し、そこには世界最多の約3000もの漁港がある。多くは税金で建設された施設である。にもかかわらず、そのほとんどすべてを漁民が占有していて、一般市民には全く開放されていない。
漁民以外がヨットやクルーザーで自由に立ち寄ることができる漁港は、漁協直営の食堂「ばんや」がドライブでも人気スポットになっている房総半島南西部の保田漁港(千葉県鋸南〈きょなん〉町)など、ごくわずかだ。
しかし、欧米ではすべての港が開放され、高齢者が子供や孫たちと一緒にマリンレジャーを楽しんでいる。
たとえばノルウェーの場合は一家に1隻、船がある。ギリシャやクロアチアでは、すべての港がどこの国の誰の船でも無料で自由に停泊できる。係留は「先着順」で、最初に来た船が桟橋のクリートにロープを係止し、次に来た船はその横に繋ぐ。そういうシステムにしているのは、自分たちの港に多くの船に来てもらい、食事や観光でお金を落としてもらいたいからである。