とはいえ、アフターサポート面も含めて、まだ“キャリア信仰”が根強い日本。iPhoneのようにキャリアと組んで売り出したほうが安定した普及も見込める。その道を選ばないとすれば、理由は何なのか。
「これまでPCを通じてしか情報を取れなかったユーザーのウェブ閲覧履歴や消費行動のデータ収集が、スマホ販売によって時間や場所も細かく把握できるようになる。アマゾンはこうした莫大なビッグデータを商品マーケティングに繋げようとしているため、他社に情報を握られる連携は極力避けたいと考えているはずです」(木暮氏)
IT専門誌の記者はこんな指摘をする。
「最近、アマゾンはデータを管理するクラウドサービスにも熱心で、日本の大手企業も続々と導入しています。レンタルサーバー事業は格安かつピーク時の容量を自動で調整してくれるなど好評を博しています。
そう考えると、どの企業のどんなサービスにアクセスが集中しているのかなど、すでにネットワークを活用する企業の情報はアマゾンに筒抜けになっているといっても過言ではありません」
アマゾンのカリスマ創業者、ジェフ・ベゾスCEOは、多品種少量購入のビジネスモデル「ロングテール戦略」を軌道に乗せた経営者として知られる。たとえ赤字でも価格競争力をつけて競合他社を叩き潰した後に、大きな収益を取るという先を見越した経営手法はお手のものだ。
早晩、日本でも売り出されるだろうファイアフォンで、アマゾンはどこまで日本の市場支配力を高めることができるだろうか。