安倍首相の成長戦略や外交姿勢を好意的に捉えたメディア報道が目に付くが、「安倍氏は本当に必要な課題を先送りにしている」と考える落合信彦氏は、そのような記事を“提灯記事”だと切り捨てる。落合信彦氏が安倍氏の問題点を綴る。
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首相の安倍がハイペースで外遊に出かけている。平均して月1回以上、既に30か国以上を訪問した。「地球儀外交」と銘打ち、歴代最高のペースで世界を飛び回っている。国民の税金を使い、アメリカやアジアはもちろんのことアフリカのモザンビークまで自ら出向く安倍は、それに見合う成果をあげているのだろうか? とてもそうは思えない。
4月末からの大型連休で安倍は10日間かけて欧州6か国を歴訪した。トップ外交で貿易協定をまとめるといった具体的な成果は何もない。新聞各紙は「集団的自衛権について欧州首脳の理解が深まった」などと外務省の宣伝文そのままの記事を書いていたが、与党の中でさえまとまっていない話を先に海外で説明することにどれだけ意味があるのだろうか。
ポルトガルでは、安倍は丸一日オフを取って観光を楽しんでいた。ユーラシア大陸最西端のロカ岬などを訪れたという。安倍が海と石碑を眺めるための観光旅行に、国民の税金を使う意味など断じてない。
勘違いしてもらいたくないが、必要なカネは使えばいい。しかし、次から次へと外遊日程を組む安倍には、その一つ一つに具体的な成果が求められるという自覚が欠けている。
思い出してもらいたい。安倍政権が発足して最初の外遊は昨年1月の東南アジア歴訪だった。ヴェトナム、タイ、インドネシアの3か国を訪れ、「中国の覇権主義に対抗するために、東南アジアとの連携を深め、信頼関係を醸成する」ことがアピールされた。
5月に入ってヴェトナムが自国の排他的経済水域(EEZ)だとする南シナ海の海域で、中国船が勝手に石油を採掘していることが明らかになった。中越両国の艦船のにらみ合いが続いているが、安倍政権は「中国の挑発的な海洋進出だ」という声明を出す程度で、具体的にはヴェトナムを何もサポートしていない。現地を訪問して築いたはずの「信頼関係」はどこかへ消えてしまったようだ。