サッカーワールドカップブラジル大会のグループリーグC組を2敗1分けで敗退した日本代表。その3試合の経過は、奇しくも8年前、ジーコ監督で臨んだドイツW杯と重なる。その大きな共通点が、チームに「王様」がいたことである。今回は本田圭佑、ドイツでは中田英寿。チームに「王様」を作ってしまったことが敗因だったのではないか。
ジーコ時代の中田は、代表選手の中でも海外経験が最も豊富で、絶対的な存在感を示していた。しかしその半面、孤立しているシーンがよく見られた。
「あの時の代表は、黄金世代を中心に編成されているためか、同世代の選手で固まる傾向がありました。中田は彼らより少し年上だったうえに、国際試合の厳しさを人一倍知っていたことから、勝利のためにどうしても発言が厳しくなりがちだった。
そのためか、食事の時には中田の隣には誰も座りたがらず、招集時期が遅いために知り合いが少なかった大黒将志が座って、2人が仲良くなったという話もあります」(スポーツジャーナリスト)
それでもジーコ監督は中田に全幅の信頼を置き、戦術面でも中田の意見を聞き入れた。結局このことが「監督は中田のいうことしか聞かない」という評判に繋がり、ますます中田とチームメイトの間に溝を作ることになる。結果チームは分裂状態となり、予選での惨敗を招く要因の一つとなった。サッカージャーナリストの財徳健治氏が語る。
「中田の場合は味方に対する言葉が少しキツすぎたことや、発言をメディアが面白おかしく取り上げたことで、歪んだ中田像ができあがってしまった。
本田はこの失敗を認識して、そうならないように努力していました。同じくビッグマウスが取り上げられたものの、あくまであれはメディア向きのもの。チームメイトを責めるような発言はなく、融和する道を選んでいた」