アメリカの量的金融緩和の縮小で方向感を見失ったヘッジファンドなどのリスクマネーは右往左往。新興国不安やウクライナ情勢などが相俟って、為替も株も債券も混乱するなか、金価格も1オンス=1200~1300ドル台の攻防が続いている。今後の金価格の動向を経済アナリスト、豊島逸夫氏が解説する。
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世界の相場を動かしているのは、やはり米国。なかでもイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の言動は相場を大きく左右することを改めて認識しておく必要がありそうだ。
では、今後の金価格はどうなるか。まずわかりやすいのが、下値である。ポイントは金の生産コストにある。昨年の金の生産コストは世界平均で1205ドル。これを割り込めば世界中の金鉱山が赤字になるため、これが心理的な抵抗ラインとなっている。
ただし、現物と違い、先物はモメンタム(勢い)で売られるものなので、生産コストなどおかまいなしに売り込まれれば、先物主導で大きく下げる場面も想定される。
そのきっかけとなりそうな今年最大の関門が、FRBによる「利上げ」である。おそらく今年後半には緩和縮小から利上げに転じることが現実味を持って語られるようになるはずだ。具体的には、今後の金融政策の方針を明示するフォワード・ガイダンスに「利上げ」という文字が刻まれることになるだろう。そうなると、ドル金利の上昇に伴って、金利を生まない金にとっては厳しい局面を迎えるのは必至の情勢といえる。
先物売りが主導する格好で、場合によっては1200ドルを割り込み、1100ドル台に突入する可能性があるかもしれない。しかし、それは一時的にすぎず、今年の下値メドは1100ドル台になると見る。
下値を支える最大の理由は、1200ドル割れを待ち構えている中国やインドの存在にほかならない。なにしろ昨年の金生産量3022トンのうち3分の2(約2000トン)を買い占めていたのは中国とインド。いずれも経済の減速に見舞われていたというのに、それだけ旺盛な買いに走っていたのだ。