アジアでもイオンモール人気高まるか(写真は幕張新都心店)
売上高6兆3951億円(2014年2月期)を誇る小売り最大手のイオングループ。いまやセブン&アイ・ホールディングスの規模をも凌ぐ同社が、「国内では敵なし」とばかりに今度は海外出店を加速させている。
イオンは日本でこれまで郊外を中心に全国約140か所ある巨大なショッピングセンター「イオンモール」の大量出店のほか、近年は旧ピーコックストアやダイエーなど食品スーパーの買収、再編を繰り返し、巨大な「流通コングロマリット」を形成してきた。
だが、そんな“肥大化戦略”もそろそろ限界が見えてきたようだ。流通アナリストでプリモリサーチ代表の鈴木孝之氏がいう。
「日本は人口減が止まらず新たな出店余地が少なくなっていることに加え、総合スーパーや食品スーパーが成熟期を迎えていて、今後の大きな成長は期待できません。
イオンが布石を打ってきたM&Aも、富士山に例えれば8合目まで登りつめ、あとは傘下に収めたグループ内の収益力を高めるのみ。そういう意味では国内から海外へのシフトは自然な成り行きといえます」
同社の海外展開はなにも今に始まったわけではない。30年前、マレーシアに進出したのを皮切りに、タイなど東南アジアや中国への出店を徐々に増やしてきた。今年に入ってからはベトナム、カンボジアでショッピングモールの開業にこぎつけた。
「今後は海外の営業利益比率を現在の10%程度から2016年度に15%、70店以上の出店を目標に掲げ、インドネシア、ミャンマー、ラオス、バングラディシュと様々な国への進出を検討している。最終的には中国も含め小売業でアジアナンバーワンの地位を狙っている」(経済誌記者)
日本ではイオンモールに通い詰める“イオニスト”の出現が話題になるほど知名度も抜群だが、初出店の国の消費者にとっては単なる外資系スーパーに過ぎない。どうやって顧客づくりをしているのか。
「イオンの海外進出には大きな特徴があります。たとえば、大型のイオンモールをオープンさせるときには、建物が完成するよりも先にグループのカード会社であるイオンクレジットサービスが現地法人を設立してカード会員を増やします。アジア各国でもカード利用率は年々高まっているので、まず金融事業で下地をつくります。
そして、モールのテナントには総合スーパーの旧ジャスコを入れたり、総合量販店のイオンリテール、その他、多くの専門店子会社などイオングループが総力を結集して乗り込んでいきます。
さらに、施設内の警備や清掃、空調など保守サービスまで傘下の総合ビルメンテナンス会社が請け負うことで、グループ間のシナジー効果が見込めるだけでなく、顧客に<清潔・快適・安全>のイメージを持たせることもできるのです」(前出・鈴木氏)
なるほど、金融事業やデベロッパー事業など非小売り事業まで手を広げるイオングループだからこそ、勝手が分からない国に進出してもすべて自前でサービス提供ができ、現地企業との提携で質が低下するといった心配もご無用というわけだ。