タトゥーの流行は世界的な現象である。サッカーW杯の中継を見ていても、ブラジルのエース、ネイマールやオランダのスナイデルら多くの選手の肌に多種多様なタトゥーが見え隠れする(アルゼンチンのメッシの左足にも愛息の手形と名前が彫り込まれている)。それを見て若者が“俺も俺も”と右に倣うのはさほど不自然なことではない。
しかし日本では、神戸市の海水浴場のように条例で入れ墨の露出禁止を定める場所があるなど、入れ墨やタトゥーを受け入れるか否かについていまだに議論が絶えない。一方で、見た目はまったく普通の若者がファッションの延長として入れ墨をいれることも珍しくなくなっている現実がある。
「少し前までは、スミ(※入れ墨やタトゥーのこと)を入れるのは“オラオラ系”と言われるファッションを好む子たちが中心でした。見るからに不良っぽいファッションですから、スミが入っていても違和感はない。でも最近は、まったく普通で好青年ふうの見かけなのに、袖をまくると竜の模様が見えてびっくりさせられるような人が多いんです。最近は和柄を和彫りで入れるのが人気ですね」(ファッション誌編集者)
昔のやくざ映画に出てきそうな和柄が人気だというが、彼らの多くはやくざでもなければ不良ですらないという。そして、お気に入りのアクセサリーを選ぶように最初は見えないところにワインポイントで、だんだんと見える場所へ大きく入れ墨を入れてゆくのだという。ファッションや決意のしるしであって、決して反社会的ではないと彼らは言うが、現実にはどこでも受け入れられるわけではない。
公共のプールや温泉、スポーツクラブなど、日本で入れ墨を見せたまま入れる場所はあまりない。かつては可能だった渋谷や六本木のクラブですら、服を着るなどして肌を隠してからでないと入場を断られるところが増えている。
しかし、お気に入りの入れ墨をいれたら、やはり人に見せたいもの。事実上“入れ墨OK”の場所についての情報は瞬く間に共有される。自然と彼らが集まることで、その場所は入れ墨の品評会のような状態になっている。
「とくに大都市圏から近く、スミを隠さなくてもよい海水浴場については情報が早いですよ。『●●はダメになったけれど、■■なら大丈夫らしい』といった毎年変わる細かい状況がすぐに広まります。その海水浴場へ行って言葉に出して自慢するわけではないけれど、より大勢の人に見てもらいたんですよ。普通の観光客の人たちから見たら、ものすごく物騒に見えるのでしょうが(苦笑)」(前出の編集者)