世界中の「聖地」をめぐる女性写真家が、ハワイのマウイ島の東端・ハナの町で出逢ったのが写真で紹介している奇跡の「三重の虹」。ハナはハワイ王家の先祖たちが暮らしていた神聖な場所で天上の地であったという。新刊『奇跡に出逢える世界の聖地』(小学館)を上梓したばかりの写真家・稲田美織氏が、聖地としてのハワイについて綴る。
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ハワイに到着して飛行機を降りた途端、花の香りに包まれた。まるで空気の粒子の一部が花の香であるかのように。そして無条件に幸せな気分になった。これが「マナ」というハワイのエネルギーなのだと後でわかった。今は観光地としての印象が強いが、ハワイは元来、神々が存在する特別な地なのだ。
ネイティブアメリカンは、東アジアからベーリング海峡にかかる陸の橋を通ってアメリカ大陸に渡っていったが、ポリネシアンはアジアから、マレーシア・インドネシアの島々を伝って約2000年前にポリネシア西域に達し、ニュージーランド、イースター島、マーケサス諸島などに広がり、マーケサス諸島やタヒチから移り住んだ人々がハワイの先住民となった。
ハワイアンはすべてに神が宿ると信じて、祈りが日々の生活そのものであり、漁をする時も、花を摘む時も、カヌーを作る時も、自然の神様に祈りを捧げてから行っていた。また月の満ち欠けによって変化するすべての月に名前が付いていて、農作業、漁業、その他の儀式など、すべて月に従って行っていた。珊瑚も満月に産卵し、潮の干満も月の引力が起こすのだから、自然に従うその方法は、かなり理に適っていたのだと確信する。
カフナは呪術師・神官で、人々の精神的指導者であったが、たとえば、それぞれの職業の達人も“カフナ”と呼ばれていた。神官は、神殿を建てるために、エネルギーに満ちた場所を見極めなければならなかった。カヌー職人のカフナは、カヌーを作るのに良い木を探すことができた。木そのものが持つ力、それを見極める人の力のことをマナ(気)という。その人が与えられた自分の役割を怠けたりすると、本来は自分に宿っていたマナがすぐに消えてしまうのだそうだ。石にもマナが宿り、人々はそこで祈りを捧げていた。
ハワイの島々にはヘイアウという神域・神殿があり、今でも人々はそこに果物をお供えしたり、掃除したり世話をしている。古代においては、特別の許可がない限り女人禁制の聖域で、その3階建ての木組みの塔や、聖水や太鼓を保管する小屋は青森の三内丸山遺跡の建物と、とても似ている気がした。