7月1日に中国・北京で行なわれた日朝協議2日前の6月29日、北朝鮮は短距離弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射した。その3日前にも、ロケット砲3発を日本海に向け発射していた。そして協議翌日の7月2日にもまた2発飛ばしている。
この暴挙に対し、小野寺五典・防衛相は「国民に重要な影響を及ぼす飛翔ではなかった」と黙認した。昨年ミサイル発射の兆候を見せた際、「許しがたい挑発」(2013年4月5日の衆院予算委員会)と怒ってみせた安倍晋三首相も今回はダンマリだ。
思い返せば2006年7月の小泉政権当時、北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」を発射した時、日本政府は安保理決議を待たずに直ちに万景峰号の入港禁止措置など厳しい制裁を科した。その方針を強く主張したのは当時官房長官だった安倍氏である。それが今回は拉致被害者の再調査を受けて、すんなりと制裁解除に舵を切るというなら、なぜ180度方針を変えたのか国民に説明すべきだろう。
本誌スクープの「朝鮮総連本部ビルの極秘返還シナリオ」も官邸ヘタレ外交のひとつだ。
「宋日昊(ソン・イルホ)・国交正常化交渉担当大使が前回協議で、“拉致問題の進展は総連による本部ビルの継続使用が条件だ”と迫った。落札したマルナカホールディングスはビルの継続使用を認めない方針を表明していたため、政府が極秘でビルを総連に返還するシナリオを準備した」(官邸関係者)
本誌7月4日号では、京都駅近くにある3300坪の土地を切り札にして、総連ビルの継続使用を図る極秘計画があることを報じた。安倍官邸がそこまで北朝鮮に配慮するのはなぜか。外務省関係者がいう。
「官邸は昨年7月の参院選前から“選挙の前に訪朝できるように調整を進めろ”と外務省に指示を出してきた。ウチとしてはいきなりそんなことは無理だといったが、官邸側は執拗に指示を繰り返す。だから北朝鮮に譲歩する形であっても総理訪朝を実現しようと無理して協議を進めている」