政府は集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更を閣議決定した。この後、自衛隊法などの改正作業が待っているが、安倍晋三政権は大きなハードルを乗り越えた。
これから正念場を迎えるのは、むしろ最大野党の民主党である。集団的自衛権に対する態度を決められないのはいまや、民主党だけになってしまったからだ。
公明党は解釈変更に同意した以上、法案採決では当然、賛成に回る。みんなの党や次世代の党、日本維新の会と結いの党が合流する橋下新党も賛成だろう。はっきりした反対は日本共産党と社民党、生活の党くらいである。
民主党はというと、労組出身議員を中心に反対派が強いかと思えば、前原誠司元代表や長島昭久元防衛副大臣ら賛成派もいて、海江田万里代表は閣議決定を前に明確な方針を打ち出せなかった。これほどの重要案件で党の態度を決められないとは、なんとも情けない話ではないか。
それでも閣議決定は所詮、法案提出を控えた政府部内の意思統一にすぎないから、野党は態度を明確に示さなくても、なんとかやり過ごせた。ところが、これから法案審議となれば、最終的には賛成か反対か一人ひとりの議員が決めなければならない。
法案採決で民主党議員たちはどうするのか。これまでの発言や行動をみれば、前原や長島らは賛成するだろう。一方、海江田代表はじめ労組出身議員たちは絶対に反対だ。つまり集団的自衛権問題が「踏み絵」になって、民主党の分裂を促すのである。
思えば、民主党は昨年の参院選、一昨年の総選挙で大敗北を喫してから、主要政策についていっこうに党内論議が進まなかった。集団的自衛権問題は典型だが、実は国民生活に直結する経済政策をめぐってもそうなのだ。
海江田代表は参院選前の党首討論で安倍首相に「どう経済を成長させるのか」と問われて「健全な消費を拡大する」と答えた。具体的には「子ども手当と高校授業料無償化を通じて(子育て世代の)手取り額を増やす。それで持続的な経済成長を目指す」と語っていた。
これは「所得再分配で成長を目指す」という話にほかならない。子ども手当も高校授業料無償化も原資は税金である。政府は打ち出の小槌ではない。国民から徴収した税金を政府が国民に再分配するだけで経済が成長するのか。