芸能

バスジャック犯演じた長塚京三「毒が不足気味だった」と作家

 この夏のドラマは力作揃いといえそうだ。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が”注目の作品”に言及した。

 * * *
 いよいよ夏ドラマがスタート。刑事ドラマに偏りがちだった前クールに比べて、バラエティ豊かなライナップに胸が躍ります。恋愛ものでは、『同窓生 人は、三度、恋をする』(TBS系木曜午後9時)。大人の恋をどう料理してくれるのか。木村拓哉がもどってくる『HERO』(フジテレビ系月曜午後9時)も、まずはチェック。

 異色ドラマも目をひきます。一話完結オムニバスドラマ『おやじの背中』(TBS系日曜午後9時)は、実力派脚本家たちが競い合う。そして『若者たち2014』(フジ系水曜午後10時)。妻夫木聡、瑛太、満島ひかりと、刮目のキャスティングに期待大。

 小泉孝太郎主演の連続ドラマ「ペテロの葬列」(TBS系月曜午後8時)は宮部みゆき原作。朝日新聞テレビ欄には目をひく大きな見出し「バスジャック犯、秘めた謎」が。

「長塚の鬼気迫る演技も見もの。初回は2時間の拡大版だが、緊張と緩和を絶妙に配したスリリングな展開‥‥」と紹介する記事。大賞賛の言葉につられ、期待を胸にチャンネルをあわせると……主人公・杉村(小泉孝太郎)らが乗り合わせたバスが、拳銃を持った老人(長塚京三)にジャックされる。人質にした乗客に対して、「慰謝料を支払う」などと不可思議なことを口走る犯人。警察が突入すると自死…。

 2時間ドラマの1時間以上がバスの中。今どきのドラマはロケで緊張感やリアル感をとことん追究する時代なのに。敢えて「バス」という狭い空間で、生きるか死ぬか命がけの緊迫したシーンを描くのだとすれば……舞台のセリフ劇のように徹底的に言葉を吟味し、セリフを練り上げておかなくては、緊張がもたない。

 言葉だけでなく細かな表情、セリフの間合い、身振り手振りすべてに緊張が走らなくては、「バスジャック」という非日常的空間は成り立たないはず。残念。バスの中の空気は弛緩していました。お茶の間で世間話をしているみたいに、ゆるんだ表情の乗客たちには驚かされました。

 深読みですが、「ストックホルム症候群」を描こうとしたのかもしれない、そう想像しました。この症候群、緊張感の中におかれ続けた結果、人質が犯人に対して過度な同情や共感を抱いてしまうという現象です。しかし、その前提として、やはり、「殺されるかもしれない」という異様なほどの緊張感がなければ。現象そのものが成り立たない。このバスジャックシーンはおよそ緊迫感とはかけ離れていた……。

 たしかに、犯人役の長塚京三さんは独特な魅力を持つ役者さん。はにかむ表情がいい。ちょっと引っ込み思案な優しさがにじみ出るあたりがいい。15秒のCMの中で「理想の上司」を演じるにはピカ一の逸材です。

 しかし、人の命をもてあそぶ凶悪犯にはあまりにも心もとない。「鬼気迫る演技」と言うにはどうやっても「毒」が不足していた。その背中も隙だらけ。いくらでも飛びついて後ろから羽交い締めにできそうな犯人でした。

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