ビジネス

新卒就活の内定率は回復傾向顕著 「拘活」「辞活」は多様化

 新卒の就活事情が回復傾向にある。「売り手市場」に伴い、問題になっているのが「企業による内定者の囲い込み」と複数の内定を持つ就活生の「内定辞退活動」だ。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏がレポートする。

 * * *
 新卒の就活が売り手市場化しています。企業においては内定者の辞退防止に躍起になっています。一方で、複数企業の内定を持っている学生は、内定を辞退しなくてはなりません。そこで盛んになっているのが、「拘活」「辞活」です。

拘活:企業における、内定者に対する内定辞退防止活動、拘束活動。
辞活:学生の側の、うまく内定を辞退する活動。
です。

 このトレンドに関して、レポートしましょう。

 00年代後半、特にリーマン・ショックの後に「就職氷河期再来」などと言われ、新卒の求人倍率、内定率は悪化していましたが、現在の大学4年生の代にあたる2015年度新卒採用においては回復傾向が顕著です。リクルートワークス研究所が発表した、2015年度卒の新卒有効求人倍率は1.61倍と、前年度の1.28倍よりも0.33ポイント回復しました。2006年卒に1.60倍を記録した際に、就職氷河期は終わったと解釈されていましたから、売り手市場に変わりつつあると言えます。

 もちろん、求人倍率は企業規模、業種によりメリハリがありますけれどね。就職情報会社などが調査している内定率の速報値も、回復傾向です。

 大学教職員の感触を聞いてみても、まだ正確なデータは把握していないものの、内定報告の数も増えていますし、内定先の銘柄も改善傾向だと言います。

 このような環境になると、何が起こるでしょう?そう、内定辞退が増えるわけですね。欲しい学生をいかに繋ぎ止めるかが鍵になってきます。もともと、ここ数年の、就職環境が厳しい時期でも内定長者と呼ばれる学生と、「無い内定」「MNT(未内定)」と呼ばれる学生の格差は拡大していました。欲しい学生は争奪戦になっていました。

 そこで、「拘活」です。欲しい学生をとことん囲い込むのです。この手法も、時代とともに変化しています。

 この「拘活」、いまから20年以上の前のバブル期にも、そして私が学生だった90年台半ばにも盛んに行われていました。「リクルーターと映画館に行った」「内定者で旅行に行った」「ホテルで、拘束された」「すべての内定先を辞退するよう、その場で電話の受話器を渡された」などの他、3S接待なるものまであったと言われています。寿司・ステーキ・ソープランドの略です(寿司・ステーキ、サウナ、ソープランドという説もあります)。かなりの実弾構成ですね。都市伝説かと思いましたが、どうやら当時、学生だった方によると事実のようで。

 さすがに、コンプライアンスがうるさい時代ですし、ネット炎上のリスクもあります。そもそも、若者にとって、ソープランドが魅力的なのかどうかも疑問ですしね。

 では、最近の「拘活」はどうなっているのでしょうか。7月8日付の日本経済新聞は「企業の内定者つなぎとめの主な対策」を紹介しています。面接での高評価を伝えて説得する、交流会や研修でつなぎとめる、内定者との接点を増やすなどの手法があげられていました。どちらかというと、正攻法が中心ですね。

 この記事で紹介されている例の他にも、内定者SNSを立ち上げ、これによってフォローする、アクセス状況が悪い学生はケアするなどの手法も定着しつつあります。

 昔からある手法ではありますが、すべての内定先を辞退するよう強要するなども、もちろんあります。「拘活」の手法も実に多様です。

関連キーワード

関連記事

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン