拉致問題解決もテーマになっている日朝協議で北朝鮮の特別調査委員会の設置が決まったが、「拉致被害者」「行方不明者」「残留日本人・日本人配偶者」の3分野に加えて、もうひとつの分科会「日本人遺骨問題分科会」がつくられた。
厚生労働省の推計によると、北朝鮮での日本人戦没者の未帰還遺骨は約2万1600柱にのぼる。しかし国交がないことから、これまで日本政府の遺骨収集事業は実施されてこなかった。そこで今回の日朝交渉を機に、北朝鮮側が遺骨収集をテーマに持ち出した。
現在、日本からの慰霊団は自費で訪朝しているが、日本政府の正規の遺骨収集事業になれば、費用は公費負担。北の狙いは、遺骨返還事業を巨大ビジネスにして日本人の税金から巨額のカネをせしめることにある。
では、遺骨収集事業でいくらのカネが動くのか。北朝鮮には全土に60~70か所の日本人の集団埋葬地の存在が知られている。そのひとつ、約2700柱が眠る平壌郊外の龍山墓地のように埋葬者が明確にわかるところもあるが、数人が埋葬された小規模な墓地や遺骨が強制移転されるなどして探すのが容易でないケースも少なくない。日朝外交筋が語る。
「引き揚げ者には埋葬者や埋葬場所を詳細に書き込んだ名簿を持ち帰った人もいて、記録がある人の遺骨は探しやすい。しかし、2万1600柱のうち名前と遺骨の場所が特定できるのは3割程度とみられており、残りは北朝鮮政府の手を借りて発掘、場合によっては遺伝子鑑定で身元を特定する作業も必要になる。
遺骨を掘り起こして洗い清める作業は北朝鮮で行なうことになるから、全部の遺骨を収集して日本に帰国させるとなると、人件費だけでも莫大な費用が発生する」
そうした日本人の遺骨発掘・改葬費用は日本側に請求されることになる。実は、その具体的な数字がすでに日朝協議の中で浮上しているという。
「遺骨1柱あたり200万円という具体的な金額が交渉のなかで取り沙汰されている。この金額がベースになって、協議の中で詰められていくだろう」(同前)