芸能

NHKが業界描くドラマ「おわこんTV」 率直で潔いと女性作家

 佳作が大作とは限らない。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏がこの夏、注目のドラマに言及する。

 * * *
「テレビ業界のみなさま、失礼します。NHKがこんな業界ドラマをつくってしまいました!!」

 という喧伝のもとに始まった異色ドラマ「おわこんTV」(NHKBS火曜日午後11時15分 全8話)。NHK初の、テレビ業界を描く業界モノドラマです。

 実はドラマがスタートする前に何度か予告を見かけたのですが、主役の一人・千葉真一があまりにも脂ぎってギトギトしていたので、「イロモノドラマかな」と先入観を持ってしまったのです。しかし、どこか気になる……。

「テレビをこのまま終わったコンテンツ(=おわこん)にさせるワケにはいかない!」

 NHKらしからぬ(?)イキの良い啖呵が。日本の公共放送が自分たちを仮にも「おわこん」と呼ぶその率直さ潔さに、期待が膨らみました。

「おわこんTV」の舞台は、下請け仕事に忙殺されるテレビ制作会社。その制作会社社長・荒巻源次郎役に千葉真一、ディレクター・三橋圭祐役に小泉孝太郎。無理難題を抱え、崖っぷちでのたうちまわる熱きテレビマンを、軽やかなタッチで描きつつ、かつ、深くえぐっていく。

 第1話のテーマは「やらせ」。第2話は「決め付け」。テレビドキュメンタリーとは何か、取材する人と取材される人の距離はどうあるべきか。問題提起を潜ませてドラマは展開していく。

「これは本当に必要なシーンか」と悩む。「こんな描き方をして放送局の機嫌を損ねないか」「有名人がヘソを曲げないか」と恐れ、心配する。お茶の間の視聴者は、完成した映像しか見られません。しかし、制作の過程でテレビマンたちは呻吟する。右往左往しつつ、しかし最後は揺るがぬ軸を定めて、表現したいポイントを決め、えいやっと勝負に出る。作品とは本来、そういうもの。理想と現実の間で「制作者側の揺れる姿」がじわっと滲み出してきて面白い。

 しかも、痛快なオチが用意されている。胸がスッとする。泣かされる。予告で見かけた千葉真一のあのギトギトな口調、実はこのドラマに必要不可欠な要素なのでした。「テレビ」という媒体が一方では欲望逆巻く現場であり、荒巻はそれを体現してもいる、と気付かされるのです。

 とにかく役者がいい。千葉真一も小泉孝太郎も、巧みにキャラクターのエッセンスを掴みとり、的確な人物造形をして演じきっています。私自身は活字業界ですが、ちょうど今、人物ルポルタージュの取材にとりかかっている最中。だからよけい、取材者が人間を描くとはどういう行為なのか、「真実」なんてあるのかという、「おわこんTV」の鋭い問いかけに考えこまされました。

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン