――デフレ時代に伸びた企業が軒並み苦戦している状況はどう見るか。
月泉:確かにアパレルでも<しまむら>や<西松屋チェーン>のようにデフレ対応型の業態で、増税後も値上げをしなかったSPA(製造小売り)チェーンは苦しんでいます。単に同じものを安く、コストパフォーマンスばかりを求めるような面白味のない商品は飽きられています。
要するに値段が安いから売れなくなったのではなく、消費者を納得させるだけの価値や新鮮さがなくなったと見るほうが自然です。北欧雑貨の<タイガーコペンハーゲン>のように、低価格でも新たな価値を提供すれば行列ができるわけですから。
――値上げに踏み切った<無印良品>や<ユニクロ>はどうなるのか。
月泉:やはり消費者が納得するような商品と適正価格なら、引き続き好業績を維持できると思いますが、まだ結果は分かりません。本当の意味で消費増税の影響が表れてくるのは、むしろこれからだといえます。
――小売り各社は、これまで以上に消費者を飽きさせない独自商品の開発が欠かせない厳しい戦いを強いられる。
月泉:高額品が売れているといっても、バブル期のように、べらぼうに高いブランド品を並べて“とぐろを巻く”ように行列ができるなんてことはあり得ません。やはり、消費者の細かいニーズやライフスタイルに合わせて、少し目先の変えた商品を出さなければ淘汰される時代といえます。
いまでも大手ディスカウントチェーンは、利益を削ってまで安価な品揃えを充実させようと、熾烈な戦いをしています。「消費が1割減れば、コンペティター(競争相手)は3割減る」と必死ですよ。
とにかく安くしなければ売れなかった時代からは少し潮目が変わったとはいえ、またいつデフレ的な価値観に逆戻りするとも限りません。