「妊娠5か月の時、彼は私に中絶を要求してきましたが私は断わりました。彼と会話をしたのはそれが最後です。現在彼がどこにいるのかは知りません。彼には娘を認知して、養育費を援助してほしいと思っています」
フィリピンの首都圏のカローカン市で母親と7人の兄弟と生活するマイリンさん(26)には7歳の娘がいる。繁華街のカラオケ店(日本のスナックのような所)で知り合った「彼」は、韓国人男性であった。
マイリンさんの娘のように、韓国人男性とフィリピン人女性の間に生まれた子供は、「コピノ」(Kopino:KoreanとFilipinoを合わせた造語)と呼ばれている。また、ベトナム戦争を契機に多く生まれた韓国人とベトナム人女性の間に生まれた子供は「ライダイハン」と呼ばれる。「ライ」は混血、「ダイハン」は韓国を意味する蔑称だ。つまり、「コピノ」はフィリピン版のライダイハンともいえよう。
その呼び名を聞くと、多くのフィリピン人は顔をしかめる。なぜなら、コピノの多くは、マイリンさん母子のように、本来父親であるはずの韓国人から、見捨てられているからだ。
コピノの存在は、いまや国際的な社会問題となっている。5月25日付ウォールストリートジャーナルは、フィリピンでコピノが急増し、社会問題になっていることを報じた。
記事では国際的ネットワーク・ECPAT(アジア観光における児童買春根絶国際キャンペーン)の資料をもとに、「コピノの数が2~3年の間にこれまでの1万人から3万人にまで増えているが、父親のほとんどは子供を捨てて帰国し、行方をくらませたままだ」と指摘している。
背景にあるのは、フィリピンに渡航する韓国人の急増だ。フィリピン観光省によると、2013年にフィリピンを訪れた全観光客約468万人のうち、韓国人は最多の約116万6000人で、4人に1人の計算になる。さらにフィリピン在住の韓国人は約10万人に上る。
渡航者の増加は、セブ島を中心に2000年代初頭から英語学校ができ始めたのを機に、韓国人留学生が増えたことが理由とされる。