2008年のGM(米ゼネラル・モーターズ)との破局に続き、これで二度目となる“国際離婚”は、果たして円満に別れられるのだろうか――。
2009年にドイツのフォルクスワーゲン(VW)と業務資本提携を結びながら、経営の主導権をめぐって対立。2011年11月よりロンドンの国際仲裁裁判所に決着を委ねていた国内軽自動車メーカーの雄、スズキのことだ。
裁判でスズキが求めているのは、VWが提携時に保有したスズキ株19.9%の買い戻し。一部報道では、互いに一歩も譲らず長引いていた仲裁結果が年内にも出される見通しだというが、「VWの継続保有が認められれば、さらに持ち株比率を高めてスズキの乗っ取りに動く可能性もゼロではない」(経済誌記者)と、さらなるドロ沼化を予想する向きもある。
しかし、「このまま資本関係を続けていても、両社にとって何のメリットもない」と話すのは、自動車ジャーナリストの井元康一郎氏だ。
「HV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)など先進エコカーの技術で他社の後塵を拝していたスズキにとって、このままでは単独での生き残りは難しいという恐怖心から、VWとの提携にこぎつけた経緯があります。ボッシュやシーメンスといったドイツのメガサピライヤーと対等に話のできるVWの持つ膨大な次世代エネルギー技術は“宝の山”だったはずです。
でも、提携してみたら思ったほどHVやEVが主流の時代にはならず、スズキが攻め入る新興国市場でも、むしろ安いエンジン車をどう売るかが課題となっていました。そこで、スズキは自前の高性能なエンジン設計技術を使って、短時間・低コストで“勝てなくても負けないクルマづくり”ができるようになったのです」(井元氏)
小型車の「スイフト」が他社の追随を許さず、クラス最高の1リッターあたり26.4kmの燃費を達成できたのも、単独での地道なエンジン開発の努力が実った証拠だ。
一方でVW側にも「今さらスズキに頼らなくても」との思いが強いはず。
「スズキの徹底した小型車開発の低コスト体質や、インドはじめ新興国に果敢に進出するタフネゴシエーションぶりは、VWにとっても利用したかったでしょう。でも、VWも自前で共通プラットフォーム戦略を築き、コストを下げてもいいクルマができる自信をつけています」(前出・井元氏)
こうした両社の事情を考慮すれば、スズキが多少のペナルティーを払っても、資本関係の完全解消という「和解」が成立するのが自然な流れといえる。