蝶ネクタイに赤いチェックのジャケット姿がトレードマーク。「整いました!」のフレーズから始まる即興なぞかけで大ブレークを果たした、お笑いコンビ・Wコロンのねづっち(39才)。大好評シリーズ企画「転機」今回は、ねづっちになぞかけを始めたきっかけ、作るコツなどを語ってもらった。そして、話題のあの人もなぞかけのネタに…。
――なぞかけを始めたきっかけは?
ねづっち:13~14年くらい前に浅草の東洋館に出ていて、落語家さんが話の枕の部分でなぞかけをやっていたんですよね。それを舞台袖で見ていて、これよりうまいのを作りたいなと思って始めました。初めは趣味でやっていたんですよ。コージー冨田さんもなぞかけが大好きで、定期的にお酒を飲みながらずっとなぞかけをやってます。
――早くひらめくようになるポイントは?
ねづっち:関連ワードをいくつか出すんです。一番手っ取り早いのは、同音異義語を先に考えてから、なになにと解きますの部分を後から当てはめるんです。慣れですね、誰にでもできますよ。
例えばお題が「日本茶」だと、急須や葉っぱやグリーンティー、そういう関連ワードがありますよね。グリーンティーだとゴルフと関連つけられるので、「お茶とかけてゴルフと解く、その心は、どちらも“グリーンティー”があるでしょう」というオチになります。「子育てと説いて、発破(葉っぱ)が大事」だとか、「ピンチと解いて、万事休す(急須)」とか。あとは、ドヤ顔さえしておけばなんとかなる (笑い)。
――ニュースなどのネタから「○○でやって」と言われることもあるんじゃないですか。
ねづっち:そうですね、話題のニュースがあると、よく“発注”うけます(笑い)。
――では、STAP細胞騒動で渦中の小保方晴子さんでは?
ねづっち:(すぐに)整いました。小保方さんとかけて、政治家の権力争いと解きます。
――その心は?
ねづっち:そこに利権(理研)が絡むでしょう。
――さすがですね。では、ゴーストライター騒動の佐村河内守さん。
ねづっち:(すぐに)整いました。佐村河内さんとかけまして、余裕のふりして1位をとると解きます。その心は、実際は2位が気(新垣)になりました。
――やっぱり早いですね。「整いました」と言うのも、初めから?
ねづっち:2005年の夏だと思うんですけど、スピードワゴンさんがラジオのゲストに呼んでくれまして。小沢(一敬)さんにお題を出された時に、なに気なく「整いました」と言ったんです。そうしたら2人が「なんだよ、整いましたって!」と食いついてくれて。それからは「整いました」と言うようにしました。一言あると違いますよね、転機ですね(笑い)。
――ブレークしたきっかけは?
ねづっち:U字工事の2人が『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で町工場芸人というのをプレゼンしたんですけど、それにぼくの名前も入れてくれて。そのオンエアがあった1週間後にすぐ、また『アメトーーク!』が声をかけてくれたんですよ。なぞかけをやったときに、雨上がり決死隊の宮迫(博之)さんが番組内で「今年来るで!」と言ってくれたんです。そこからですね。あれは本当にありがたい一言、恩人ですよ。
――そこから仕事の依頼がじゃんじゃん?
ねづっち:そうですね、そこから1年はハンパなかったですね。休んだのは自分の結婚式の1日だけ。当時は電車で移動していたんですけど、睡眠は1日3時間くらいで、電車に座った瞬間に寝ちゃうんですよ。あまりにも眠くて (笑い)。
――最高月収はかなりいったんじゃないですか?
ねづっち:500万円くらいですかね。でも1回だけですよ、S-1バトルの賞金(1,000万円)が入ったりして。賞金は引っ越し代に消えました。それまで嫁とひとつのシングルベッドを使っていたんですけど、ベッドが2つになりました(笑い)。嫁には食えない時にいっぱい食わせてもらったので、好きなだけ使えって偉そうに言っちゃったんですよ。そうしたら本当に好きなだけ使うから、さすがにやめてくれって(笑い)。
――最低月収は?
ねづっち:芸人なんて初めはゼロですよ。一番最初のライブに出た時には500円を2人で分けて250円ですから。交通費は自腹なので、当時は浅草まで自転車で行ったりしましたね。1時間20分くらいかかりました。帰りに雨に打たれると絶望的な気分になるんですよ。
――そんな時期は、奥さんが支えてくれたんですね。
ねづっち:そうですね。嫁が住んでいるワンルームにずっと寝泊まりしていて、これじゃだめになるからって、一緒に住む部屋を探したんです。6万円くらいならなんとかなるんじゃないかって言ったんですけど、「それじゃ頑張らないだろうから」って、嫁があえて10万円いくらの部屋にしちゃって。家賃はぼくが出したんですけど、バイト代が全部そこで飛んじゃう。だから「スイカチャージしたいからお金頂戴」とか、必要になったらその都度もらうという感じでした。
――バイトはいつまでしていましたか?
ねづっち:2009年までいろいろしていましたね。22才から3年間は、ダンディ坂野さんとマクドナルドで一緒にバイトしました。ダンディさんは週6で、ぼくは週5でしたね。ダンディさんは真面目で、お喋りしてると“ねづ君、そういう態度だとおいしいハンバーガーを作れません”って。本当にマックの人間じゃないかと思ったぐらい(笑い)。
――これからの目標は?
ねづっち:今やっている事を続けたいだけなんです。それが結局、死ぬまでということになるじゃないですか。なぞかけは一生続けていこうと思いますからね。内海桂子師匠なんて90才過ぎても舞台に立ってカッコイイじゃないですか。ぼくもああなりたいですね。
【ねづっち】
1975年2月18日生まれ。東京都出身。1997年、芸人デビュー。2004年、木曽さんちゅうと漫才コンビ・Wコロンを結成。「整いました!」は2010年の流行語大賞トップ10入り。漫才新人大賞特別賞や浅草芸能大賞新人賞などをはじめ、数々の賞を受賞。2012年に漫才協会の第24代真打に昇進。動物や食べ物などのなぞかけを集めた児童書『江戸のなそなぞ なぞかけランド』3部作(理論社)が発売中。