ビジネス

サントリー佐治信忠社長 幼少期に開高健の薫陶受けて育った

 創業家出身の社長といえば、伝統を重視し、改革を嫌うきらいがある。帝王学を授かりながらも、就任した途端、守りに入ってしまうトップは珍しくはない。特に、「孤独」に弱い二世や三世は多い。ところが、サントリー社長・佐治信忠氏、この人はまるで違う。大きすぎる父の背中に臆することなく改革を追い求めてきた。最大の改革が初の「創業家外」への社長禅譲だろう。10月1日から、ローソン会長の新浪剛史氏が同社社長に就任する。

 サントリーに社長就任前から、佐治氏の取材を重ねてきた経済ジャーナリスト・永井隆氏が、異端の創業家社長の来歴を綴る。  

 * * *
「サントリーは創業から115歳となり、官僚化が進み、やんちゃボーイ、やんちゃガールが少なくなった。新浪さんは“やってみなはれ”の人なので、グローバル化の推進とともに新しい空気を会社に吹き込んでほしい」

 こうした台詞をさらっと口にできる経営者が日本に何人いるだろうか。自社の欠点、そして自らの力不足を、臆することなく語ってしまう。しかも、大きな声で、明るく、淀みなく。発言の主は、佐治信忠サントリーホールディングス(HD)社長。7月1日、ホテルオークラで開かれた新社長の内定会見での一幕だ。

 佐治社長の隣には、10月1日から社長に就任する新浪剛史ローソン会長が座る。佐治氏とは対照的に、時折笑顔を見せながらも「プレッシャーは大きい」と緊張を露わにする。  会場には、「サントリーが世界で生き残るための最後で唯一のチャンス」といった佐治氏の声が響きわたる。父親でありサントリー第二代社長の佐治敬三氏もそうだったが、迫力満点である。

 同社の創業は1899年。信治郎氏の実家は両替商を営んでいたが、大阪の薬問屋に丁稚奉公。その後、薬用成分のある輸入ワインと出会い、「赤玉ポートワイン」を販売する。戦前の日本に洋酒市場を創出し、会社の礎を築いた。

 1961年、次男・敬三氏が長男の死を受け、会社を継いだ。敬三氏は宣伝、マーケティングに力を注いだ。「トリスを飲んでハワイへ行こう」とは同社宣伝部に在籍していた山口瞳の名コピーだ。戦後日本人の憧れ、ハワイと看板商品を見事に結びつける。洋酒市場を切り拓いた祖父、企業に文化的価値を見い出した父。ちなみに母方の祖父は戦艦「大和」の設計者で、第十三代東大総長の平賀譲だ。

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン