中露の姿勢がこう変わってくると、日本はどう動いたらいいか。まずは集団的自衛権の行使容認である。
集団的自衛権をめぐっては「有事になったらどうする」という話ばかり議論されてきたが、本当に大事なポイントは別にある。「有事をどう避けるか」が核心なのだ。
尖閣諸島が侵攻されたら「日本が戦うのは集団的自衛権か個別的自衛権か」などとのんびり話をしていられない。いずれにせよ反撃する。それより中国に無謀な試みを思いとどまらせる。そのためには「いざとなったら日米一体で戦うぞ」という姿勢を見せる。それが肝心だ。ベトナムに学ぶべき点もそこにある。
集団的自衛権を容認すると、日米がこれまでできなかった共通の敵を想定した軍事訓練を一体的に統合してできるようになる。それが抑止力の強化になるのだ。
一方、ロシアの苦境は北方領土問題を抱える日本にとって当然、有利に働く。プーチンに同情する必要はさらさらない。日本も対露制裁に同調したが、だからといって状況を活用しない手はない。ケンカしていても話はすべきだ。
ここは米欧とプーチンの間に立って、日本が独自の外交を模索すべき局面である。
(文中敬称略)
文■長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)。
※週刊ポスト2014年8月15・22日号