公的な人物の醜聞が、叩けば出るどころではないレベルで噴出しているのが今の中国。現地の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏が報告するのは、 ネット界の超有名人をめぐる騒動である。
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自らを「BABY」と呼び、ミニブログ(微博)ではぜい沢な暮らしぶりを綴り、全国民からの注目を集めていたネット界のスター、郭美美(本名・郭美玲)が逮捕された。2014年7月9日、容疑はブラジル・ワールドカップに絡むサッカー賭博であった。
「誰もがいつかはこうなると思っていましたよ。あれだけの騒動を起こしてただ済むはずはありませんから」
と語るのは広東省の週刊紙記者だ。
「全身整形であることを隠そうともせず、美貌を武器にセレブな生活を送る彼女の暮らしには激しい賛否が渦巻いていました。彼女一躍有名にしたのは、2011年6月に彼女が写真付きで出したミニブログです。ブランド品や高級マンション、高級車などを臆面もなく自慢する内容でしたが、なかでも注目を集めたのは澳門のカジノで撮った一枚の写真でした。そこには1枚500万香港ドルもするチップが十枚並べられて(約6億5000万円)いたのです。
まもなくネット上ではこんな贅沢ができるのはパトロンがいるからだ、となり、すぐに犯人探しとなりました」
パトロン候補として最初に名前が浮上したのは、中国赤十字会の副会長である郭長江だった。きっかけは郭美美が自身のブログで、ぜい沢ができる理由について「私は中国赤十字商業代表取締」と綴っていたことだった。郭長江は郭美美の父親だとメディアも書き立てた。
だが、ほどなくして郭長江は郭美美と接点がないことが明らかになる。
「そこで名前が挙がったのが王軍という人物です。赤十字が組織の外につくった営利のための組織の大株主です。郭美美は王軍のことを〝干爸〟(パパ)と呼ぶ関係でした」(同前)
この展開に慌てたのが中国赤十字である。郭長江は、自分の名前が上がると同時に記者会見でこれを否定したが、王軍の場合にはそうはいかなかった。中国赤十字はしかたなく組織の関わる営利活動のすべてを中止する措置を取ったが、ダメージは避けられなかった。中国赤十字に寄せられてきた寄付金が激減するという事態におちぃったからだ。
中国赤十字を殺した女――。郭美美がそう呼ばれるようになったのはこのためだ。
だが、当の郭美美は反省する様子も見ることもなく、歌手としてミュージックビデオを発売、続いて映画に主演するなど芸能活動を始めるのだった。
自慢の白のマセラッティを運転中に、中国の巨大国有企業の役員――中国共産党幹部――が乗るアウディと接触事故を起こしたのもこのころだ。相手の中糧集団といえば、国務院直轄の企業で、巨大な権力である。だが郭美美は、そんな相手にもひるまず果敢に挑みかかり、ついには69万元もの賠償を勝ち取るのである。