フィギュアスケート・浅田真央選手が出演するCMで知られるマットレスパッド、エアウィーヴ。発売から7年、2013年2月期の売上高は前期比4.8倍の53億円、2014年2月期は1.7倍の93億円と急成長。だが、ここまでに波瀾万丈の物語があった。作家の山下柚実氏が報告する。
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そもそも、「寝具とはまったく無縁だった」というエアウィーヴの高岡本州社長。電力会社向け配電機器メーカーを経営していた彼の元に、伯父から、魚網や釣り糸の成形機械メーカーを引き継いでくれないか、という話が舞い込んできたのは10年前。
「その会社は赤字続き。漁網の糸でクッション材を作るなど工夫を凝らしましたが、再建しようにも下請けのままでは難しい。一大決心をして、ベッドパッドを作り、直接消費者に売ることにしたのです」
時はちょうど低反発の枕やマットレスがブームになっていた頃。寝具業界に目を向けると、その特殊性に気付いた。
「大きな技術革新が長い間ないまま、数社の独占状態が続いていた。よし、寝具業界に新技術を持ち込めば勝負できる、と思った。漁網を作る技術を活かし、樹脂製の糸を三次元に編み込み、反発力と復元力が高いベッドパッドを作ることを考えました」(高岡氏)
時代の流行は「低反発」。しかし「そのユーザーをごっそりいただける」(高岡氏)と、敢えて正反対の「高反発」マットレスを提案した。身体が沈み込まず、寝返りを打ちやすいため余計な体力を使わずに熟睡できる。樹脂の糸を編んでいるから通気性が高く洗濯も可能。「高反発」は良いことずくめのはずだった。
「約200人にモニターになってもらい、これまでにない寝心地と快眠環境を提供する最高の寝具に仕上がったと、絶対の自信がありました」
ところが、最初の1か月はたった2枚、年に180枚しか売れない。あてがはずれた。広告費約4000万円を投じた販売戦略も見直さざるをえなくなった。
「良いものを作れば売れる当たり前のようにそう思ってきたけれど、それが実は大きな間違いだったのです」
高岡社長は考えた。「もの作り」だけではだめだ。「売り方」も大事なのだ。ベンチャーゆえに、「広告」という方法にも限界がある。まったく別のアプローチで、「ブランド」を構築できないか。考えた末、2つのアプローチが浮上した。