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高校野球大好き芸人 甲子園前で野宿し観戦続ける理由を語る

 今年の甲子園は、台風11号の影響で開会式から二日間全試合が順延になるという、96年の歴史の中で史上初の珍事から始まった。しかし風と雨が押し寄せるなか、球場前でひたすら開門を待ちわびて、野宿を続けるひとりの芸人の姿があった。「高校野球大好き芸人」こと、いけだてつやさん(31歳)である。なぜ彼はそこまでしてまで高校野球が見たいのか。素顔を追った。(取材・文=フリーライター・神田憲行)

 * * *
--いつから野宿されているんですか。
いけだ:(当初の開幕予定日だった)9日の開会式を見るために、8日の夜に球場に着きました。

--その時点でもう相当降っていたと思うんですが。
いけだ:降ってましたね。球場の外側にもひさしみたいなところがあって、多少の雨ならそのひさしの下で寝れば大丈夫なんですが、今回は風が強くて雨が吹き込んで来ました。寝てて気づいたら下半身が雨でびしょ濡れで……。

--寝られませんよね。
いけだ:甲子園で観戦すること考えて、寝ました。ベトナム戦争映画で雨の中で寝ているアメリカ兵みたいな、そんなイメージです。

--いけださんだけでなく、他にも野宿されている方も多い。
いけだ:そうなんですよ。濡れそうな他の人の荷物を移したり、寝るための狭いスペースを融通しあったり、この台風ですっかり「心はひとつ」になりました。

--他の方はわりとご年配の方もいらっしゃいますね。
いけだ:みなさんご熱心で、春夏の甲子園と秋季大会が生き甲斐と仰っていました。

--高校野球がない冬はどうされているんでしょうか。
いけだ:箱根駅伝みて過ごされるそうです。それを「命のバトン」と呼ぶそうです。

--でも大会中ずっと野宿されているんでしょう?みなさん、お仕事はなにをされているんですか。
いけだ:(硬い小声で)それを聞かないのがここのルールです……。

--し、失礼しました。いけださん、お風呂とかはどうされているんですか。
いけだ:歩いて15分ぐらいの距離に銭湯があるので毎日通ってます。でもお風呂入っても15分歩いて帰ってきたら、結局汗だくなんですけれど。

--食事は?
いけだ:基本は近くのスーパーのタイムセール品です。あと差し入れもあるんですよ。

--えっ差し入れ?どなたから?
いけだ:通りすがりの人が「ほらよ」って感じでくれるんです。今年もこの2日間でバナナ2房もらいました。起きたらホットコーヒーが置いてあったこともあります。「お供え」みたいな感覚なんですかね。

--いつごろからこうして野宿するようになったんですか。
いけだ:10年の夏ですね。その前の09年に、事務所の先輩のアンジャッシュの渡部建さんに誘われて、渡部さんの母校の日野高校の西東京大会の試合を見に行ったんですよ。そしたらめちゃくちゃ面白くて、高校野球を球場で見ることにハマったんです。

--ハマるのはわかるんですが、なんでいきなり野宿になるんです?
いけだ:(きょとんとして)ホテルに泊まるお金がないからです。

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