安倍政権の“暴走”がいよいよ顕著になってきた。中国の反日活動が高まりを見せる中で、安倍氏が「集団的自衛権の行使容認」の閣議決定を強行したことで、日中関係はどのように動いていくのだろう。大前研一氏は、安倍政権の行く末に警鐘を鳴らす。
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集団的自衛権の行使容認によってアメリカとの関係は改善したものの、中国を刺激したことでアジアの緊張感は一段と高まっている。安倍首相はアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドやフィリピンなどの東南アジア諸国と仲良くやっていれば中国の膨張主義に歯止めをかけることができると考えているようだが、それは浅はかすぎる。実際は中国を硬化させ、火に油を注いでいるだけだ。
対立する日中関係に足を引っ張られるのは経済界である。ただでさえ欧米企業が強く、近年は韓国企業の台頭が著しい中国市場で、日本企業はビジネス展開が一段と難しくなって非常に苦労している。たとえば、自動車メーカーが新しい車種の許認可手続きで不当に時間をかけられたり、医薬品メーカーが当局から日本の薬の処方を控えるように指示されたりしているのだ。
その点、日本のライバル国はもっと戦略的に動いている。ドイツはメルケル首相が大勢の経済人を同行して7回も訪中している。フォルクスワーゲンは7つの工場で300万台体制を築き上げ、GMを抜いて圧倒的占有率を誇っている。韓国も朴槿恵大統領が習近平国家主席と緊密な関係を築いている。ドイツや韓国は自国企業が中国で仕事がやりやすい環境を、国家元首自身が懸命に醸成しているのだ。