日中両国は、未だ首脳会談すら実現しない冷え切った関係が続いている。中国は変わらず対日強硬姿勢を貫いているが、一方で脆弱化した日中外交のパイプを再構築すべく、政界工作に余念がない。主なターゲットになっているのは、自民党の若手幹部候補だ。
中国が対日政界工作を強める背景には、自民党の世代交代で親中派と呼ばれる議員が急速に減っていることがある。
過去、日中のパイプ役となってきた野中広務氏、加藤紘一氏、河野洋平氏といった自民党の大物親中派議員たちは軒並み引退し、政権への影響力もなくなった。しかも、日中関係が悪化する中、前回総選挙で大量に当選した新人議員には「領土問題での中国の覇権主義、戦争責任を外交的駆け引きに使うやり方への反発から嫌中感情がかなり強い」(自民党1年生議員)という。
事実、自民党青年局は中国ではなく台湾との交流を深めており、前青年局長の小泉進次郎氏は昨年秋、青年局の議員約100人を連れて台湾を訪問し、現地のプロ野球の始球式に登板したほどだ。
日本側の対中政界窓口の4団体のうち、日中友好協会会長の加藤紘一氏と日本国際貿易促進協会会長の河野洋平氏はすでに政界を引退して自民党内に影響力はなく、日中友好議連会長の高村正彦・自民党副総裁、日中協会会長の野田毅・自民党税調会長は現役とはいえ、ともに70代と高齢化は覆いがたい。
とくに中国を驚かせたのが、今年5月に訪中して中国ナンバー3の張徳江・全人代常務委員長らと会談した高村・日中友好議連会長の言葉だった。
「あなた方は安倍政権を好ましくないと考えているかもしれないが、安倍総理は2018年まで総理を務めるだろう。その間、首脳会談を開かないつもりですか」
親中派とされる高村氏が安倍政権が長期政権になるという見通しの上で、中国の対日姿勢の転換を迫ったことに、中国側が危機感を感じたことは容易に想像できる。