朝日新聞は吉田清治氏(故人)が証言した戦時中の「慰安婦の強制連行」についての記事を8月5日にようやく取り消した。この問題が深刻なのは、朝日の嘘が国際社会で既成事実化されたからだ。朝日の慰安婦報道が国際社会に定着した過程を改めて検証する。西岡力・東京基督教大学教授が語る。
「韓国政府は朝日の報道を受け、1992年7月に『日帝下軍隊慰安婦実態調査中間報告』をまとめ、その中で吉田氏の著書を強制連行の証拠として採用しました」
それを受けて韓国外務省アジア局長が、「慰安婦動員に日本政府が強制または強制に近い方法を行使したと推察される」という見解を表明すると、朝日は待ってましたとばかりに〈日本政府としてはこの問題に対する責任ある対策を強く促されることになった〉(同年7月31日付)と報じた。
親日派として知られた当時の盧泰愚・韓国大統領は退任直前、慰安婦問題について〈日本の言論機関の方が問題を提起し、我が国の国民の反日感情を焚きつけて国民を憤激させてしまいました〉(文藝春秋1993年3月号の対談)と告白している。
それでもいったん上がった火の手は止まらない。国連にも飛び火した。弁護士の戸塚悦朗氏が1992年2月の国連人権委員会に出席し、強制連行と慰安婦問題で日本政府に責任を取らせるように提起した。
国連人権委員会は審理を始め、スリランカの法学者で特別報告官のクマラスワミ女史を中心とする調査団が元慰安婦らから事情聴取。1996年の報告書では慰安婦を正式に「性奴隷(セックス・スレイブ)」と定義した。その中には、〈強制連行を行った1人である吉田清治は戦時中の体験を書いた中で、他の朝鮮人とともに1000人もの女性を「慰安婦」として連行した奴隷狩りに加わっていたことを告白している〉とある。西岡氏が解説する。